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2019年06月06日

「歯と口の健康週間」~歯・口腔内トラブルは万病の元!

去る6月4日は虫歯の6(む)4(し)の語呂合わせにちなんだ虫歯予防デーであり、その日から1週間(~10日)は歯と口の健康週間である。厚生労働省、文部科学省、そして日本歯科医師会、日本学校歯科医会が実施しているもので、虫歯予防に関する啓発やイベントが全国各地で実施される。また、80歳の時点で自分自身の歯を20本以上残そうという「8020運動」も行われており、国では2022年度までに50%の人が達成できるようにという目標も掲げている。
今月は歯と口の健康週間にちなみ、歯を中心とした口腔内の健康維持についてまとめてお伝えしよう。

口腔内異常でQOLが低下
虫歯はこうして進行する!

ご存知の通り、口腔には様々な役割がある。息を吸う、食事をする、喋るなど、ただ生きるためだけを目的とするのではなく、食事ひとつをとっても美味しく味わい、食感も楽しんだり、歌を歌ったり楽器を演奏したりなど、実に多様な活躍をしているものだ。
この口腔に異常が起こり、思うように動かせなくなってしまうと、QOL(生活の質)が下がってしまい、最悪の場合には健康を害する事にも繋がるだろう。
様々な役割を持つ口腔であるが、その構造は歯と歯を支える歯肉、そして骨、舌、喉、分泌される唾液、そしてこれらを動かすための筋肉や、動きを制御をするための神経など、絶妙な連携により成り立っている。これらの要素のうち一つでもトラブルが発生し、欠けてしまうとうまく機能しなくなってしまうのだ。それでは口腔内に発生しやすいトラブルを、おもに高齢者に多いものについて解説しよう。

■虫歯

我々の口の中には、もともと数多くの細菌が住み着いているが、食事や飲み物に含まれている糖分を餌にして増殖し、プラークと呼ばれるネバネバ状の塊を作り、それが歯の表面にこびりつく。このプラークからは酸性の物質が作られて、歯の表面のエナメル質を溶かし、穴を開けてしまうのだ。これが虫歯である。

虫歯の病状はいくつかの段階に分かれる。まず初期の段階の虫歯では、歯の表面のエナメル質が溶けて白くなる。この段階であれば、プラークを綺麗に除去し、さらにフッ化物を塗布することで再石灰化を行い、元通りに戻すことができる。
治療をせずにそのまま放置し、虫歯が進行するとエナメル質に穴が開いてしまう。こうなると元に戻すことはできず、歯を削って治療するしかない。

さらに進行すると、エナメル質の内部にある象牙質まで細菌が進入してしまう。この段階までは痛みは発生しないため、虫歯が進行していることに気づかなかったり、たとえ気づいていてもつい放置してしまうこともあるだろう。象牙質は表面のエナメル質よりも酸に弱く、虫歯はどんどん進行してしまう。そして象牙質にも穴が開き、その奥にある歯の神経にまで細菌が進入してしまうと、ここで初めて痛みを感じるようになる。
さらに虫歯を放置すると、細菌に犯された神経は死んでしまい、そこでも細菌が増殖する。やがて神経をたどり、その根元のあごの骨の中でも細菌が繁殖し、こうなると腫れあがったり熱が出たりもする。
虫歯の治療は、細菌が入り込んだ部分を綺麗に削り取り、代わりに金属やセラミックなどを詰めたりかぶせたりするが、進行がひどい場合には抜歯しなければならない。

正しい歯みがきでプラーク除去

■歯周病

虫歯は歯の病気だが、一方で歯周病は歯の周りの歯肉や骨の病気である。
歯周病は歯と歯肉の境目部分にプラークがたまり、歯肉が炎症を起こしてして赤く腫れたり出血を起こしたりするもの。
歯と歯肉は、本来であれば歯根膜とよばれる繊維状の組織によって固定されているが、歯周病が進むとこの歯根膜が徐々に破壊されて、歯周ポケットと呼ばれる隙間ができる。この隙間にもプラークが入り込み、歯の根元の方へ向って歯根膜が破壊されてゆく。この段階になると歯肉の腫れや出血もひどくなり、痛みも出て、さらに歯がぐらぐらするようになる。歯周ポケットには膿もたまり、口臭も気になるようになる。さらに歯周病が進行して重度になると、歯を支える歯槽骨まで破壊されて、歯が抜け落ちそうになるほどにぐらぐらしてしまう。

虫歯・歯周病の予防法

虫歯、歯周病ともに予防法はプラークを除去すること。そのためにはやはり毎日の歯みがきが重要である。プラークは歯の表面に頑固に張り付いたり、歯周ポケットの内側に入り込んでいるため、正しいブラッシングをしなければ完全に除去することは難しい。歯科医師に相談をして、正しいブラッシングの仕方を教えてもらうと良いだろう。
また、それでもプラークを落としきれないと、やがて硬い歯石が生成されてしまう。この状態になると自身によるブラッシングだけでは除去できなくなってしまうため、やはり歯科医師に除去してもらうことが必要だ。かかりつけの歯科を持つことも良いだろう。
また、通常の歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを落としきることは難しい。そのため、専用の器具も販売されている。

《部分磨き専用ブラシ》

ブラシが植毛されているヘッドの部分が通常の歯ブラシよりも小さく作られている。奥歯の裏側など、狭い隙間を磨く際に利用すると良い。

《歯間ブラシ》

細い針金の先にブラシが植毛されているもの。歯と歯の間の隙間に差し込んで往復させるようにブラッシングして汚れをかき出すように使用する。
歯や歯肉を痛めないよう、隙間にあった適度な太さのものを選び、ゆっくりと磨くようにする。

《糸楊枝》

歯間ブラシが入らないほど狭い隙間を磨くためのもの。「楊枝」と名前が付けられているが、実際には楊枝のような形状をしているわけではなく、糸状のものである。
この糸を歯と歯の間に差し込み、往復させるように磨く。
歯を磨く際には、歯だけではなく口の中全体を清掃する意識も大切である。歯肉そのもの、そして舌の表面、上あごの裏側、頬の内側部分にも歯周病菌が潜んでいる。粘膜なので力を入れず、傷つけないよう優しく撫でるようにして清掃する。

禁煙など生活習慣改善も

また、虫歯や歯周病を予防するためには、生活習慣の改善も大切。
とくに喫煙は歯周病のリスクになるため、禁煙することも有効である。煙草の中にはニコチンやタールといった有害物質が多く含まれており、それらがプラークを付着させやすくしたり、歯周病菌に対する抵抗力を弱めてしまったり、すでに歯周病の状態であるならば悪化させてしまうこともある。
そのほかにも、食物繊維を多く含む野菜を取るようにしたり、ゆっくりとよく噛んで食事をするようにする。よく噛むと唾液の分泌を促し、口の中が清潔に保たれるようになる。

口腔内トラブルは万病の元である。以上の内容を参考にしていただき、いくつになっても自分自身の歯でしっかりと噛み、食事を美味しく楽しめるようにしていただきたい。(老友新聞社)

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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