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2019年03月05日

司馬遼太郎が子供たちへ贈ったエッセイ『二十一世紀に生きる君たちへ』…いたわりの心があれば人類が仲良しで暮らせる時代は来る。

作家の司馬遼太郎さんが平成元(1989)年、大阪書籍という教科書会社から小学生の国語教科書に載せる原稿を依頼され、『二十一世紀に生きる君たちへ』と題したエッセイを書いた。

400字詰め原稿用紙10枚程度の短いものだが、司馬さんは何度も推敲を重ね、長編小説を書くほどのエネルギーを費やしたという

 

司馬さんは子どもたちに、こう問いかける。

〈私は、人という文字を見るとき、しばしば感動する。ななめの画がたがいに支え合って、構成されているのである。人間は、社会をつくって生きている。社会とは、支え合う仕組みということである。〉

〈助け合うという気持ちや行動のもとは、いたわりという感情である。『いたわり』『他人の痛みを感じること』『やさしさ』これら三つの言葉は、もともと一つの根から出ている。根といっても、本能ではない。だから、私たちは訓練をしてそれを身につけなければならない。その訓練とは、簡単なことだ。例えば、友達がころぶ。ああ痛かったろうな、と感じる気持ちを、そのつど自分でつくりあげていきさえすればよい。この根っこの感情が、自己の中でしっかり根づいていけば、他民族へのいたわりという気持ちもわき出てくる。〉

〈君たちさえ、そういう自己をつくっていけば、21世紀は人類が仲よしで暮らせる時代になるだろう。〉

 

このエッセイは、平成元年の大阪書籍の教科書「小学校国語六年下」に載った。司馬さんが伝えたかったことは、他人の痛みを自分の痛みと感じる「いたわり」であり、相手を慮る心である

今日の世界状況に目を転じれば、米国のトランプ大統領の「アメリカンファースト」のみならず、欧州では反EUや反移民・難民を掲げる右派政党が支持を伸ばすなど、協調やいたわり、弱者への配慮とは逆の状況がみられる。

司馬遼太郎さんは1996(平成8)年、72歳で亡くなった。これは21世紀を生きる世界の人達への「遺言」でもあろう。(老友新聞社)

 

 

 

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