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図書館の新刊本貸し出し問題~出版社と図書館側の言い分は平行線
「公立図書館は文庫を貸し出さないでほしい」
―大手出版社社長の発言が波紋を呼んでいる。
10月13日開かれた全国図書館大会分科会で文藝春秋の松井社長は、「文庫を積極的に貸し出す公共図書館が増えている。それが文庫市場の低迷に少なからず影響を与えているのではないかと考えている」とし、「文庫ぐらいは自分で買おうという空気が醸成されることが重要」と訴えた。そして公共図書館に文庫の貸し出しをやめるよう要望し、読者に向けても「借りずに買ってください」と呼びかけた。
出版物の販売額は1997年をピークに減少し、ピーク時の7割弱に落ち込んでいる。
図書館の新刊本貸し出し問題は、2000年代初め頃から起きている。作家から「図書館は無料貸本屋化している」という批判が起き、その後、人気作品の複数冊購入(複本)が問題視された。
昨年の全国図書館大会では、新潮社の佐藤社長が「図書館貸し出しによって、増刷できたはずのものが出来なくなり、出版社は苦労している」と訴え、「貸し出し猶予」を要請した。出版社が増刷を重視するのは、重版ができて初めて採算ラインに乗るという事情があるためだ。
図書館側は「図書館の影響で出版社の売り上げがどのくらい減るかという実証的データがあるわけではない」としており、両者の言い分は平行線である。
ちなみに、ヨーロッパでは著者に一定金額を補償するなどの制度を導入している国が多いという。
読書の秋。
58回を迎える「神田古本まつり」が10月27日から11月5日まで開催されている。100万冊のバーゲン本が出品され、30万人の人出が見込まれている。掘り出しもの目当てに秋の古本街を散策し鋭気を養ってみてはいかがだろうか。
(老友新聞社)
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