高齢者のための情報サイト【日本老友新聞】

老友新聞
ルーペ

ニュース

2016年08月30日

第二の人生は人の役に立つ福祉美容師に

定年後の時間の過ごし方は、人によってさまざまだ。中には、意外な進路を選ぶ人もいる。大手コンピュータメーカーを定年退職後、58歳で美容師免許を取得した人がいる。藤田巌さん(74歳)がその人だ。自ら福祉美容師と名づけて自身の会社を起こし、現在も現役で活躍中の藤田さんにお話を伺った。

美容師免許を取得し起業!
藤田巌さん(74歳)

「私は定年後を第二の人生と考えていました。ですから定年後はボランティアや趣味をするのではなく、人の役に立つ仕事をしたいと考えていたのです」
と言う藤田巌さん。優秀な営業マンだった藤田さんが、第二の人生の職業として選んだのは美容師だった。では、なぜ美容師という職種を選んだのだろう。

「定年を意識し始めた50歳初め、さまざまな講習会や講演会に出席しました。そんなとき、施設で寝たきりの高齢の方が、髪をセットしてもらったことで元気になり、歩けるようになったという新聞記事を目にしたのです。『医師にできないことが美容師にできる!』と思ったことが美容師を目指した理由です」
美容師専門学校の通信制への申し込みは2度断られた。3度めで受け入れられ、会社のリフレッシュ休暇を利用してスクーリングにも参加。出勤前の練習を続けて、土日は手弁当で学校に紹介してもらった美容院で修行した。そうして3度目の挑戦で免許を取得。
「若い人たちの2倍の早さで進めないといけませんでしたからね」と笑いながら話すが、その意志の強さは想像を超える。
「56歳のとき、1年後にホノルルマラソンに出場しようと決めたとき、1日の練習量を決め、そこから距離を伸ばして最終的に出場できました。計画性をもって目標を達成するのが得意なんですね。そのホノルルマラソン出場の過程と同じ考え方をしたんです」
藤田さんが独り立ちしたのは60歳のときだ。店までの送迎、訪問先での施術がある美容院を開業した。

施設カットに衝撃!

「美容師の勉強と並行してホームヘルパー(現在は介護職員初任者)講座を受講した時期がありました。そのとき、施設実習で施設カットというものを見たのです。男性も女性も一律にバリカンで刈り上げていく。『女性に取って髪はとても大切なものなのに』と衝撃を受けました。そのとき、美容師と福祉を結びつけようと思いついたのです」

施術後明るい表情に
「ありがとう。また来てネ」が励み

1面「美容師としての第二の人生」28年8月号写真1

それから14年、送迎と訪問サービスのある『カットクリエイト21』と、訪問美容室の『若蛙』の代表取締役として、多くのスタッフを抱えている。
「私自身も現役で施術しています。そもそもの私の目標が美容師ですから、施術をしなければ意味がありません(笑)。美容師として技術があるのは当たり前のことです。それ以上に心が入っているかということが大切だと思っています。目を見て挨拶する、お名前を呼んで会話する、服装などに関して褒めるときは心をこめて……それが私が最も大切にしていることです。寝たきりの方も、認知症の方も、施術が終わったときにはみなさん表情が明るくなっていますよ」
そんな藤田さんにとって、一番うれしいことは、施術後「ありがとう。また来てね」と言われることだそうだ。
「そのために仕事をしているようなものです」
と藤田さんは顔を崩す。

藤田さんは最後にこう言った。
「人は亡くなる最期のときに、楽しい記憶を思い出すと思うのです。多くの人が、そのための記憶をたくさん作っておくといいなあと思うんですよ。それは大きなことでなくていいと思うんです。近所の素晴らしい桜並木を今年見たら、それを来年も見に行こうと思う。来年になったら再来年も見に行こうと。それをずっと続けていたら素敵な思い出になりますよね。誰かとグルメを楽しみに出かけたり、外に出ることが大切です。思い出は自分で作っていかないと」

新たに資格を取り会社を立ち上げたりするのは並大抵のことではない。しかし、藤田さんのこの言葉はうれしい刺激になるのではないだろうか。(老友新聞社)

この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。

高齢者に忍び寄るフレイル問題 特集ページ
日本老友新聞・新聞購読のお申込み
日本老友新聞・新聞購読のお申込み
  • トップへ戻る ホームへ戻る