医療と健康
女性に多い「鉄欠乏性貧血」とは
血液検査は我々の健康の指標となるもので、健康診断では必ずと言ってよいほど行われるもの。その血液にまつわる疾患のなかで、とくに女性に多いとされる貧血について、なぜ貧血になるのか、その治療法についても、まとめてお伝えしよう。
血液の役割
まずは血液の持つ重要な役割についてお伝えしよう。我々は口から空気を吸い、その空気は気管支を通り、肺へと流れ込む。肺の中には肺胞と呼ばれる器官があり、そこで血液と肺胞の間で、体に必要な酸素を血液に取り入れたり、逆に体にとって不要な二酸化炭素を血液から排出したりというガス交換が行われている。
肺胞というものは非常に細かく、数の多い器官であり、その表面積は左右の肺を合わせると60~70平方メートルにもなるという。出来るだけ多く、出来るだけ早く酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出すため、細かい袋状の器官をたくさん持っているのだ。そのおかげで、わずか0.25秒というあっという間の時間で、酸素と二酸化炭素の出し入れを行う事が出来るのだ。この重要な働きは、我々が生きている限りずっと繰り返し行われなければならない。
貧血とはどのような状態か
血液の中には、赤血球と呼ばれる小さな粒が存在している。さらにその中には、赤血球を赤い色に染めているヘモグロビンという組織が存在するのだが、そこにヘムと呼ばれる鉄が存在する。その鉄が酸素を吸着し、血液の流れに乗って体中に酸素を運んでいるのだ。
もしも、このヘモグロビンの値が下がってしまったり、あるいは鉄が不足してしまったりすると、当然酸素を運べなくなり、息切れが起きてしまう。また、それでも体の隅々まで酸素を運ばなければならないため、心臓はどんどん脈拍を早くし、血液をより多く流そうとする、いわゆる頻脈の状態になるのだ。
体の中の鉄というものはごく少量しか存在せず、釘一本分くらいだという。そのうち3分の2は血液中のヘモグロビンの中に入っているもので、我々が生きる上で必要不可欠な酸素を運搬してくれる重要な役割を担っている。
その鉄が不足すると鉄欠乏性貧血となる。女性の場合は月経過多、子宮筋腫、子宮内膜症などがみられる方の場合。また、消化管に潰瘍や腫瘍などがある人の場合。あるいは痔を持っている人の場合。いずれも出血を伴い、鉄欠乏となりやすい。また妊娠中の人は、赤ちゃんのためにどんどんと体の中の鉄分が使われるため、やはり鉄欠乏になりやすい。
鉄欠乏性貧血の症状
では、鉄欠乏性貧血によく見られる症状についてまとめよう。
よく症状として現れるのが爪である。普通、爪は上に凸に膨らんでいるものであるが、貧血になると、内側に凹み、さじ状になり、薄く割れやすくなる。
また、鉄は細胞の増殖にとっても非常に重要な役割を担っているために、代謝、つまり細胞の入れ替わりが激しい部分、たとえば舌や、味を感じる味蕾(みらい)細胞など、そういった部分に炎症が生じてくる。
それから持久力の低下。集中力の低下。寝つき、寝起きの悪さ。食欲低下など、全般的な体調の低下が現れてくる。
少し変わった症状としては、普段は食べないようなものを無性に食べたくなるというもの。たとえば氷をガリガリとかじりたくなる、あるいは土を食べたくなるという場合もあるという。
鉄欠乏性貧血の診断と治療
まずは採血をし、赤血球や白血球の数、血小板の数といったものと同時に、ヘモグロビンの数値を測定する。一個一個の赤血球の中に入っているヘモグロビンの量や赤血球の大きさなどで鉄欠乏性貧血かどうか判断できる。
鉄欠乏性貧血であれば、体のどこからか、慢性的に出血をしている可能性がある。女性の場合、子宮筋腫が原因である場合があるため、婦人科にも行き、検査を行うとよい。
それでも分からない場合や、男性の場合には、便を調べ、出血がないか調べる。胃に近い上部消化管から出血している場合には、便がタールのように黒くなる。逆に痔などで、肛門に近い部分からの出血では、便の表面に鮮血がついて分かる場合がある。
それでも分からない場合には、内視鏡検査などで、どこで出血を起こしているかを調べる必要がある。
治療は、まず出血の原因となっている疾患を治療すること。そして鉄剤を投与する事で貧血が解消される場合には、内服剤、あるいは注射を使用する。
鉄剤を内服すると、便が少し黒くなるが心配はない。希に嘔吐、胃がもたれる等の副作用が出る場合もある。もしも副作用が強い場合には、静脈に鉄剤を直接投与するという事もある。
もちろん、鉄剤によって鉄分を補給するのではなく、普段の食生活の中で十分な鉄を摂れるようにすることが理想である。レバーや赤身の肉、豆類、海藻類が鉄分を多く含む。その際に、鉄を吸収しやすくするためのビタミンCを合わせて摂るなどの工夫をしながら、鉄分不足にならないような食生活を心掛けてほしい。
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