医療と健康
入れ歯と上手に付き合おう
おいしいものをおいしくいただくためには、しっかりと噛めなければ始まらない。自分の歯でしっかりと噛めれば良いのだが、総入れ歯、部分入れ歯を使用している老友読者も多いかと思う。今月4日~10日までは「歯と口の健康習慣」であったが、これを期に改めて入れ歯についての正しい使い方や手入れの方法などをまとめてみたので参考にして欲しい。
「今は不都合感じない…」
それでも放置してはいけない
入れ歯の形状は、個人個人の口の形状、残存歯の数や場所などに対応させるため、一つとして同じものは無い。また、初めて入れ歯を使用する際に、すぐに馴染む人もいれば、なかなか自分の口に合わずに不便な思いをする人もいる。
噛みにくい、気になる、吐き気がする、痛い、ものが挟まる、しゃべりにくいなど、色々な問題があるが、極端な場合、せっかく入れ歯を作成したのに、使わないほうが食べやすい、しゃべりやすいということで、入れ歯を使わなくなってしまうケースもあるのではないか。
日本は入れ歯先進国で歴史も古く、使いやすい、そして見た目も良い様々な入れ歯が開発されているが、それでも入れ歯に関する悩みは尽きない。
だが、作った入れ歯が合わないからといって、外したままでいると、抜けた歯の前後の歯が動いてしまい、傾いてしまう恐れもある。
また、抜けた歯をそのまま放置していると、それまでかみ合っていたはずの歯が相手を探すように、だんだんと伸びてきてしまい、結果、噛みあわせが悪くなってしまうこともあるそうだ。歯が抜けた後、そのままにせず、きちんと入れ歯を入れておくことで、それが「押さえ」の役割を果たし、歯並びや噛みあわせを崩さず、正常に保つことが出来るのだ。
「とりあえず今は不都合を感じないから……」
といって放置していると、後に大変な思いをすることになりかねないので、気をつけたい。
しかし、実際に入れ歯を作り、初めて口に装着をすると違和感を覚えるものだ。慣れるまでの期間は異なるが、ずっと慣れないという人もいるだろう。だが、大抵の場合は、入れ歯の正しい装着法、正しい手入れ法さえ身につければ、違和感がなくなることが多いという。より良い入れ歯との付き合い方、そのコツを紹介しよう。
入れ歯は「道具」
使うには練習も必要
入れ歯というのは、食事、会話をしやすくするための「道具」である。はじめて手にする道具を上手に使うには、箸がそうであるように、入れ歯の入れ方、噛み方、発音の仕方など、やはり練習が必要なのだ。
入れ歯の入れ方のコツとしては、手でしっかりと持って入れて、指でしっかりとあわせるようにすること。面倒くさがり、ポイと口に入れた後、そのまま噛んで入れてしまう人はいないだろうか。このような入れ方をすると、部分入れ歯の場合には留め金を曲げてしまうこともあり、あるいは歯茎の土手を傷つけてしまう恐れもある。
また、部分入れ歯には、複数の金具があり、つける順番が決められているものもある。つける順番を間違えると、うまくはまらないものや、外れないものもあるため、歯科医の指示通りにすること。慣れないうちは、鏡の前で練習をすると良い。
傷みや違和感がある時は
早めに医師へ相談を
入れ歯を入れて、痛みを感じる場合には無理に使用しないこと。痛みを感じるのは、入れ歯がどこかにこすれているためで、いくら我慢しても良くなる事は無い。むしろ我慢することで、傷が広がり、治りにくくなってしまう。治りにくくなると、そのぶん入れ歯をつけられない期間が長くなり、不自由な思いをすることになるので、痛みを感じたらなるべく早くに担当の医師に診てもらうようにすること。
また、入れ歯で痛みを感じたり、具合が悪かったりした際に、自分で治そうとする人もいるという。しかし入れ歯というのはデリケートなものなので、ペンチやヤスリなどの一般的な工具で治そうとすると、逆に壊してしまったり、傷をつけてしまったりする。決して自分で治そうとは思わないこと。
箸や茶わん等と同じように
入れ歯のお手入れは食事毎に
次に、入れ歯の手入れ法について紹介する。
入れ歯も自分の歯と同じように汚れやばい菌が付着し、歯石などはむしろ入れ歯の方がつきやすいという。汚れたままの入れ歯を長く使っていると、歯茎の土手の部分にもばい菌が付着し、赤くただれてしまうこともある。
また、留め金も、かけっぱなしにしておくと、留め金の形に沿って虫歯が出来てしまう。食事をした後は、一度外して、よく掃除をすること。
入れ歯は箸や茶碗などの食器と同じ。一度使った食器を、洗わずにもう一度使う事はないだろう。入れ歯も同じで、食事の後には毎回掃除をするのが理想だ。
また、消毒のつもりで熱湯をかける人はいないだろうか。熱湯をかけると、プラスティックの部分が熱で変形し、合わなくなってしまう恐れもあるので、熱湯消毒は避けること。
入れ歯だけでなく、残存歯や口腔内も清潔に保つことが重要だ。歯の本数が少なくなってくると、通常の歯ブラシではどうしても磨きにくくなるので、ガーゼやひも状のデンタルフロス、歯間ブラシなどを組み合わせて使うと良い。また、歯の無い歯茎の土手の部分も入れ歯によって血行が悪くなっている事があるので、ガーゼなどを使ってマッサージをしてやると良いそうだ。
入れ歯も口も休憩が必要
最後に、入れ歯の保存方法について。夜眠るときに、入れ歯は入れたままで良いのだろうか。
実は、入れ歯を一日中ずっと装着したままでいると、歯茎の土手の部分の血行が悪くなったり、ただれてしまうこともあるために、入れ歯を外して休ませることも必要なのだ。
保存方法は、ふたの閉まるタッパーを用意し、中に水を張って保存するようにする。入れ歯は、あまり乾燥させすぎると変形することもあるという。もちろん水はこまめに変えるようにしないと腐ってしまうので注意すること。
入れ歯を作成したからといって、はじめから硬いものがスムースに食べられるようになる訳ではない。噛むこともしゃべることも、少しずつ慣らし、練習をして、自分の歯に近づけていくことが必要なようだ。
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