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医療と健康

2021年04月02日

「花粉症」発症と予防策

毎年この時期になると悩まされる人は多いと思う花粉症。日本人の2人に1人が何らかの花粉症の症状があるといわれており、まさに国民病とも呼べるだろう。今月は花粉症について、その発症の仕組みや予防策について詳しくお伝えしよう。

花粉症発症の仕組みと症状

とくに今年は花粉の飛散量が多い年だという。昨年の夏は記録的な猛暑となり、日照時間も多かった影響を受けて、今年の春は全体的に花粉の量が多くなり、地域によっては昨年の3倍程度の飛散量になるという。

ひとことで花粉といってもその種類は様々ある。花粉の種類によって飛散する時期が異なり、実は一年中飛び交っているものなのだ。花粉症を発症させる花粉でよく知られているのはスギやヒノキの花粉で、その飛散時期は2月~4月であり、まさに今の時期がピーク。そしてイネ花粉は5月~6月、そしてブタクサは8月~9月がピークとなっている。

花粉症は風邪などのウイルス感染とは異なり、アレルギー反応の一種である。アレルギーの原因となる物質をアレルゲンといい、このアレルゲンが鼻や目の粘膜を通して体内に侵入すると、体はこれを攻撃するための「IgE抗体」というものが作られ、このIgE抗体がさらに体内の「マスト細胞」と結合すると、アレルギーが起きる準備が整ってしまう。その後再び体内にアレルゲンが侵入すると、マスト細胞はかゆみや充血の元になる物質を放出する。その結果、様々な花粉症の症状が発生するようになるのだ。

花粉症の症状は様々あり、体質によって、あるいは重症度によって異なる。何度も繰り返すくしゃみ、さらさらとした透明な鼻水が出る、あるいは鼻づまり、目のかゆみや充血などが主な症状であり、のどの痛みや咳、発熱などの症状がほとんど見られないのが風邪症状と異なる点である

花粉症の診断と治療
まずアレルゲン調べる

花粉症の検査は採血を行い、原因となっている花粉の種類(アレルゲン)を特定するもの。一度に数種類のアレルゲンを調べることができるので、何の花粉が原因となっているのかが分かれば、花粉症を発症する時期もあらかじめ特定することが出来る。また、原因が花粉ではなく、ハウスダストやペットがアレルゲンとなっている場合もあるため、毎年症状に悩まされている人は一度医療機関にて検査を受けてみることをおすすめする。
花粉症と診断された場合、治療法は様々ある。治療の持続期間や、人によっては副作用もあるため、自分自身にあった治療法を選択する。

自分にあった治療法選択

①服薬による治療
抗ヒスタミン薬と呼ばれる薬を内服する治療法。花粉の飛散時期に合わせて処方してもらい、毎日1~2回服用する。目のかゆみや鼻水、くしゃみを抑えるなどの効果が得られるが、副作用としてのどの渇きや眠気が現れることがあるため、服用中は車の運転や機械の操作などを避ける必要があることが多い。

②スプレー式治療薬
鼻腔内に薬剤を噴霧して治療を行うもの。ステロイドの点鼻薬が基本になるが、毎日定期的に噴霧することで、アレルギー反応を抑えていく。
症状が治まらない場合には、鼻粘膜の充血を抑えて症状を緩和する目的で使う短時間作用型の点鼻薬もある。バッグやポケットの中に携帯出来る小型のスプレーのため、外出先などでも症状が出たタイミングで使用が出来る。主に鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの鼻症状を抑えられ、一度噴霧すると数時間程度の効果が得られる。

③舌下免疫治療
治療薬を舌の下において、決められた時間そのまま保持した後に飲み込む。その後5分間は飲食、うがいなどは控える。これを1日1回、数年に渡って長期間治療を続けると、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状を抑える効果がゆっくりと現れてくる。治療を長く続けることでその効果も安定してきて、やがて抗ヒスタミン薬などの服薬治療も不要になるほどの効果が得られる。ただし最初の1回目の服用の際は医師の指導の下で行う必要があり、その後の治療期間中にも月に1度、医師の診察が推奨される。また花粉が飛散している時期は治療を開始できないといった制限もある。

発症前対策で症状軽減
自分で行える花粉症対策

花粉症は症状が現れる前に対策を行うことで発症を予防、あるいは症状を軽減させることが出来る。自分自身で日常的に行える花粉症対策をお伝えしよう。

【外出時】
晴れている日、とくに雨上がりの晴れの日は花粉の飛散量が多くなる。また風の強い日や乾燥している日も花粉が飛びやすく注意が必要で、眼鏡、マスクを装着して外出をすること。
今は新型コロナウイルス感染予防のため、マスクは皆が着用していることと思われるが、眼鏡もかけることで花粉が目に入ることを防ぐことができる。花粉症対策用の眼鏡も市販されているが、専用のものではなくサングラスのようなものでもある程度の効果は得られる。
また上着はつるつるした素材のものを選ぶと花粉が衣服に付着しにくい。

【帰宅時】
室内に入る前に上着を手で払うことで花粉を持ち込んでしまう事を防げる。また手洗い、うがいも心掛ける。

【室内】
カーペットの表面は花粉が付着しやすいため、こまめに掃除機をかける。洗濯物は外で干すと花粉が付着してしまうため、花粉が飛散している時期は部屋干しに切り替える。
また、掃除や洗濯ものの取り込みの際にはマスクをつけて作業をすると良い。

ただでさえ辛い花粉症の症状。とくにコロナ禍の今はくしゃみをしただけでも周囲から冷たい目で見られてしまうということもある。早めに治療、そして日常からしっかりと予防対策を行うことで、この辛い時期を乗り越えていただきたい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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