医療と健康
魔法の箱
2020年は新型コロナウィルス 感染症(COVID-19)の猛威が、かつて黒死病(ペスト)の大流行が後のルネサンスに影響したように、私達の社会構造や価値観の変化を加速した年となりました。
このような中、とりわけ情報・通信技術(スマートフォンやパーソナルコンピューター(パソコン)と、インターネット)が、COVID-19の感染拡大抑制に多大な貢献をしていることは否定できません。テレワークやオンライン教育は、最早当たり前のことになりました。私は薬科大学の教員として当然のことですが、オンライン教育を通しての変化を目の当たりにしたと同時に、自分がパソコンを始めた当時の情報・通信技術環境と比べると隔世の感を禁じ得ませんでした。
1981年の冬、まだNEC PC-8001が日本のパソコン市場を席巻していた頃、虹色のアップルマークに惚れ、Apple II plusによって私のパソコン人生が始まり、今年で丸40年になろうとしています(歳を実感したくないので20年以降は勘定していませんでしたが、この原稿を書かせていただくにあたり再度勘定してビックリ)。当時のパソコンは、プログラム(アプリケーション)をカセットテープからロードし実行するというものが主流で、コマンドは全てキーボードから入力し、マウスもトラックパッドも存在しませんでした。今では当たり前となっている画面のカラー表示ですら高嶺の花だったことをよく覚えています。
それが今やどうでしょう。地球上はおろか宇宙ステーションとパソコンやスマートフォンでビデオ通話までもが出来るようになりました。つまり、インターネットによって宇宙空間までもが1つになっているということです。私の大好きなSF映画である「スタートレック」に登場するコミュニケーター(無線機)ではビデオ通話が出来ませんでした。最近のパソコンやスマートフォンは、私がパソコンを使い始めた頃のものと比べると数十万〜百万倍のメモリ容量や処理能力を有しています。まさに時空を超えることの出来る「魔法の箱」と言えるでしょう。この素晴らしい魔法の箱を使えば、私の講義(例えが悪い?)にアマゾンの原生林の中からでも北極からでも「参加する意思」さえあれば誰でも参加することが出来るのです。これは色々な観点(例えばSGDs-4:だれもが平等に質の高い教育を受けられる)から考えても、とても素敵な事だと思います。
ところで、日本の半導体技術は世界最高水準であることは誰もが認めるところですが、デジタル技術の利用に関しては全くの後進国となっています。理由は様々なことが考えられますが、その主たる理由は変化を好まないからだと私は思います。別の言い方をすれば、これまでの方法・手法に固執するからです。当たり前のことですが、パソコンは万能ではありません。万能ではありませんが、魔法の箱の「得意なやり方」にしてやれば無類の能力を発揮します。このことは、何もパソコンに限らず我々の社会にも通じることだと思います。
読者の皆様は、とうに魔法の箱を使いこなしていらっしゃる方ばかりかと思いますが、どこかで「どうもパソコンは苦手」「パソコンは敵」のように感じていても「本当は使ってみたい」という気持ちをお持ちでしたらしたら、是非とも、人生の相棒となる魔法の箱を手に入れて下さい。そして、自由気ままに地球・宇宙・知恵の泉・・・を旅して下さい。
パソコン選びのコツですか? 簡単です。「これを使いたい!」と思うカッコイイ魔法の箱を選ぶことです。虹色のアップルマークに惚れ込んで40年。この私が証明しております。
最後のご挨拶はスタートレック風にさせていただきます。
Live long and prosper(皆様に長寿と繁栄あれ!)
- 齋藤 俊昭 博士
- 日本薬科大学 薬学部 教授 博士(薬学)
- 専門は有機化学、医薬品化学、計算化学
- 日本薬科大学 公式サイト
https://www.nichiyaku.ac.jp/
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