医療と健康
転倒・骨折の危険因子とは?
高齢になると運動能力の低下、筋力の減少(サルコペニア)、バランス感覚の低下によって転倒をしやすくなる。さらに骨密度の低下によって転倒した際に骨折をしてしまうことが多くなる。高齢者にとって骨折とは、QOL(生活の質)を著しく低下させ、寝たきりの状態に陥る危険がある、まさに深刻な事態となるのだ。転倒・骨折の危険因子、さらに予防法についてまとめた。
寝たきりになるリスク
高齢者の転倒確率は20%
高齢になるとどうしても骨は脆くなり、ちょっとした転倒でも骨折をしてしまう。そして若い人に比べて治りも悪い。寝たきりの状態が長く続くと、呼吸器にも悪影響を及ぼし、肺炎等にかかり命を落としてしまうという事例が非常に多い。
寝たきりを防ぎ、自分の足で立ったり座ったり歩いたり、自分でやれることはできる限り自分で行いたい。要介護を防いで健康寿命をできる限り長く伸ばすためにも骨折を予防したいと誰もが思うだろう。しかし、日本での全国調査によると、高齢者が1年間のうちに転倒をする確率はおよそ20%程度にもなると言われている。
さらに年齢が上がるにつれ、転倒の可能性は上昇することも明らかになっているという。とくに後期高齢者の女性の場合は30~40%もの人が1年間に1回以上転倒を経験するという。
高齢者における転倒・骨折の危険因子は様々あるが、以下に紹介するので予防をするためにもぜひ知っておいていただきたい。
■骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下することにより骨折しやすくなる状態である。骨は、人の体の組織の中でも非常に硬いものであるが、筋肉や皮膚と同じように古くなった組織を捨て、新しい組織を産生しするという新陳代謝を常に行っているのである。そのため、骨を作り出すための原料となるカルシウムなどの栄養素が不足していると、新しい組織が作られず、それでも古い組織は捨てられていくため、すると骨はスカスカになり、脆く折れやすくなってしまうのだ。これが骨粗鬆症の状態である。
骨粗鬆症はカルシウム不足、およびカルシウムの吸収を促進するビタミンD、さらにカルシウムが骨に定着するのを助けるビタミンKなどが不足することが原因となる。
また栄養面のほかにも加齢や遺伝的要素、さらに糖尿病や脂質異常症、高血圧症、慢性腎臓病、虚血性心疾患、脳血管疾患なども発症要因となる。
とくに高齢女性は骨粗鬆症に陥りやすい。それは骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きを持つエストロゲンという女性ホルモンが閉経期を迎えると分泌量が低下し、同年代の男性と比較しても骨密度が低下しやすくなることが原因である。
■筋力低下
筋力は加齢によって自然に低下していくものである。筋力は20代がピークであり、それ以降は10年でおよそ6%ずつ低下していくといわれている。つまり70代では20代の頃と比較し30%程も筋力が低下していることになる。
お金と違い、筋肉は使えば使うほど貯まるものである。年齢による衰えをカバーするほど筋肉を使い続けられれば、いつまでも若々しい肉体でいられるのだが、高齢になるとどうしても活動量が減ってしまう。筋力が低下すると転倒しやすくなり、すなわち骨折の危険性も高くなる。
また筋力が低下すると体がバランスを崩した際に踏ん張りが効かなくなる。若い頃はちょっとくらいつまづいたり足を滑らせたりしても、素早く足を動かして踏ん張り、転ばずに済むことが多い。しかし高齢になるとバランス感覚も低下し、さらに体を素早く動かすこともできなくなる。筋力が低下していると踏ん張りも効かずに、ちょっとしたつまづきで転倒してしまう恐れがあるのだ。
■環境因子
つまづきやすい、転びやすい環境で生活をしていると、当然転倒・骨折のリスクが高まる。高齢になると足の筋力が衰え、太ももやひざが上に上がりにくく、摺り足状態で歩くことが癖になる。すると若い頃には気にしなかったほどのちょっとした段差でもつまづく原因となるのだ。
また高齢になると部屋を片付けることも億劫になり、床に物が散乱している状態になりやすい。床に置かれたままの家電製品のリモコンや雑誌などを踏みつけてバランスを崩したりすることも多い。また布団を敷いたままにしていると、布団が足に絡まったり、足を滑らせやすいので注意が必要だ
日光を浴びて体を動かそう
骨折を防ぐためには、以上のような要素をできる限り改善することが肝心である。
まず栄養面では、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを多く含む食材を積極的に取ること。さらにビタミンDは日光を浴びることで体内で合成され、さらに骨は適度な刺激・衝撃を与えることでより強くなるものである。家の中に閉じこもりにならずに、外へ出て日光を浴びながら、ウォーキングなどで体を動かすことが骨を丈夫にし、さらに筋力を維持することにも繋がる。
また、室内をきちんと片付けることも転倒防止につながる。高齢者の転倒は、外出の際だけとは限らず、むしろ室内で起こることが多いと言われている。床に物を置いたままにせず、普段歩く動線上に物が落ちていないかどうかを確認。またマットレスがめくれていたりするとつまづく原因となる。両手が塞がった状態で歩くとバランスを崩しやすかったり、転倒しそうになった際に、どこかへ掴まることができなくなるため、とくに注意が必要。
以上のポイントに注意をして骨粗鬆症、筋力低下を予防し、転倒・骨折を防いでいただきたい。定期的に骨密度の検査をすることもお薦めだ。
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