医療と健康
この時期とくに注意したい食中毒…原因と予防法
じめじめとした日が続いている。この時期に心配なのは食中毒である。食中毒とは一年中発生するものだが、とくに高温多湿のこの時期にはもっとも発生件数が高くなる。今回は食中毒の発生原因とその予防法、そして食中毒になりにくい体になるためにはどうすればよいのかをまとめたので参考にしてほしい。
冷蔵庫の普及や食品の安全管理がきちんと整備された昨今、食中毒なんて自分には関係ないと油断はしていないだろうか。実は、食中毒の患者数というものは、現在も昔も、さほど変わっていないのだという。
とくに食中毒の発生しやすい時期というのは7月から9月にかけての3か月間であり、食中毒の年間発生件数のおよそ半数がこの期間に集中するという。食品が痛みやすい梅雨の時期が明けたからといって油断は出来ないのだ。
食中毒の原因と症状
そもそも食中毒とは何であるか。かびの生えてしまった食品、腐ってしまった食品を食べてしまい、腹痛を起こすものと考えがちだが、食中毒を引き起こす原因は実に様々である。
原因を大きく分けると、細菌によるもの、ウイルスによるもの、そして自然毒、つまりキノコや野草、フグなどに自然に含まれている有害物質によるもの、寄生虫によるもの、有害化学物質によるものなどがあげられる。我々がよく耳にするO―157やO―111などが原因となる食中毒は、細菌による毒素によって起こるものである。
食中毒の主な症状としては、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などが多く、場合によっては全身麻痺、意識障害などが発生する場合もある。これらの症状が発生するまでには潜伏期間があり、食中毒の種類によって数時間から十日間ほどの場合もある。
食中毒予防の3つの原則
では、食中毒を予防するにはどうすればよいか。3つの原則があるのでお伝えしよう。
まず1つめは細菌を付けないこと。食中毒の原因となる細菌は、食品そのものに付いている場合だけではない。調理器具に付着していたり、あるいは自分自身の手などに細菌が付いている場合もある。調理をする前には、まず手をしっかりと洗う。さらに包丁やまな板などの調理器具も清潔に保つ必要がある。細菌は除菌が出来る台所用洗剤も販売されているので利用すると良い。
2つめは細菌を増やさないこと。一般的に食中毒菌は温かい環境で増殖する。冷蔵が必要な食品をスーパーなどで購入した後は、すぐに自宅へ持ち帰り、冷蔵庫に入れるようにしたい。車で買い物をし、トランクの中に食材を入れっぱなしにして、そのまま多の店に寄り道をしたり、外食をしてしまったりすることはないだろうか。車のトランクの中はとくに高温になるため、食中毒菌が急激に増殖してしまう可能性があるので注意していただきたい。
冷蔵庫の使い方にも注意が必要だ。冷蔵庫に食品を詰め込みすぎると、冷気にムラができ、よく冷えずに食中毒菌を増殖させてしまうことがある。また、冷凍をしておいた食品を、室温で解凍させるのも危険なのだそうだ。室温で解凍させる場合、食品の内部まできちんと解凍させるには時間がかかる。そのため、食品の表面温度は室温と同じ状態が長く続いてしまうので、そこで食中毒菌が増殖してしまうのだ。冷凍した食品を解凍するには冷蔵庫内で行なうか、あるいは電子レンジの解凍機能を利用すると良い。
3つ目は、細菌をやっつけること。温かい所を好む食中毒菌であるが、一定以上の高温ではやっつけることができる。食品を加熱調理をする場合には、中まででしっかりと火を通すこと。作り置きの料理をレンジで温める場合も、しっかりと加熱することだ。
腸の免疫力
ここでひとつ注目したいのは、食中毒事件のニュースなどを見た場合、同じ食事をしたのにも関わらず、食中毒にかかる人とかからない人がいるということだ。これには、その人の健康状態や免疫力が関係しているという。
たとえば、健康な人と体調の悪い人が同じ食事をし、食中毒菌を口にしてしまった場合でも、健康な人であれば何ともなかったり、軽い下痢で済むこともある。一方で、体調が悪い人の場合、少しの量を食べただけで食中毒を発症し、重症化してしまったりする。
この差に深くかかわっているものが免疫力ということになるのだが、近頃は腸の免疫力というものが注目されている。我々の腸には免疫を司る細胞が、全体の約60%~70%も集まっているといわれている。つまり、人にとって腸管免疫系は最も大きな免疫系ということだ。腸内環境を整えて、この免疫力を高めれば、体の中に悪い菌が入ってきたとしても排除できるというわけだ。
では、腸内環境を整えるにはどうしたらよいのか。腸内には善玉菌と悪玉菌がいるということは読者の皆さんもご存知だろう。この善玉菌を増やし、腸内環境を整えてくれる食べ物がプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌のこと)や、プレバイオティクス(善玉菌を増やすオリゴ糖など)である。つまり、プロバイオティクスやプレバイオティクスを摂取することで腸内の免疫力が高まるということだ。
ここで、プロバイオティクスは摂取した人の腸内に定着するかどうかがポイントになるのに対し、プレバイオティクス、すなわち食物繊維や難消化性のオリゴ糖は、人がもともと持っている善玉菌のエサになり、効果的に増やすことができるという。
腸管免疫系は我々の体にとって大変重要な役割を果たしており、腸内環境を整えることは食中毒の予防、さらに便秘などの生活習慣病の予防などにもつながり、健康の要と言えるだろう。
オリゴ糖は豆腐、納豆などの大豆加工品をはじめ、ゴボウ、玉ねぎ、バナナ、はちみつなどに多く含まれているが、ビフィズス菌を増やす効果のある市販のオリゴ糖を利用すれば手軽に摂取することができる
今回ご紹介した食中毒予防の3つの原則と、そして腸内環境の改善。しっかり頭に入れて頂き、このじめじめとした季節を乗り切っていただきたい。
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