医療と健康
黒くてベトベトした便が続くのは消化管出血の疑いも
便の色が黒く軟便が続く
64歳の男性です。最近、便の色が黒くなって、ベトベトしているような気がします。
普段は、いわゆる普通の便でしたが、ここ数日間は、いつも下痢をしているような軟らかい便で、色も黒い状態が続いております。
食生活が突然変わったということは無いのですが、職場の環境が変わって悩みが増え、食欲は落ちたような気もします。もしかするとストレスのせいでしょうか。原因が分かりましたら教えてください。
消化管出血の疑い 早急に胃カメラ検査を
今回は便の状態が普段と違うという方からのご相談です。
便に異常がある場合は、やはり消化器系の病気との関連があることが多いため注意が必要になります。今回のように便の色が黒くなるという状態は、黒色便、あるいはタール便といわれることがあります。このような症状が現れた場合には、一般的に消化管出血、とくに胃や十二指腸を中心とした上部消化管からの出血が疑われます。
血液というのは通常赤いものですが、血がそのまま放置されると、時間経過とともに黒っぽく変色します。血液中のヘモグロビンには鉄分が入っており、それが酸化をすることによって変性し、黒い色になるのです。
たとえば胃潰瘍や十二指腸潰瘍があり、そこから出血していたりすると、その血液が便に混じり、排泄をするまでの間に酸化をして黒い色になるのです。また、それ以上に注意しなければならないのは胃がんです。胃がんによる出血の可能性もあるため、至急、胃カメラの検査でチェックをする必要があります。
同じ消化管の病気である大腸がんの場合は、肛門から近い部分ですので、まだ血が赤い状態で便に混ざることが多いのですが、大腸の中でも肛門から遠い部分、上行結腸などからの出血ですと、便の色も少し黒くなることもあります。上部消化管に問題がなくとも、下部消化管の検査、つまり大腸内視鏡検査を受けてみることも必要になります。
それ以外の原因でも、たとえばたくさん鼻血が出て、それを飲み込んでしまった場合にも、便に血液が混じりますから、量が多ければ便が黒くなることもあります。また、病気ではない場合でも、たとえば女性に多い貧血で、その中でも鉄分が不足していることが原因の鉄欠乏性貧血の場合では、治療のために鉄剤を飲むことがあります。そういった薬を飲んでいると、その鉄分が原因で便が黒くなることもあるので、この場合はとくに心配はいりません。また、希ではありますが、極端に肉食に偏った食事を続けますと便が黒くなることもありますが、その場合は食生活の見直しで改善します。
あなたの場合は、最近悩み事が増えて、ストレスが多いような訴えもあるので、この場合はやはり胃潰瘍、十二指腸潰瘍が発生しやすい状況といえます。そういったことから知らぬ間に出血していることが十分考えられますので、きちんと検査を受けるようにしてください。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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