医療と健康
高血圧は体に悪影響。では低血圧の場合には?
低血圧で朝からふらふらするのですが悪影響は?
62歳の女性です。私はここ1年くらい、自宅で血圧を毎朝計測しているのですが、上が100くらい、下が50くらいです。一般の人と比べて、おそらく低い方かと思うのですが、高いわけでは無いので、そのまま気にしていませんでした。
しかし最近になって、朝に食欲が無かったり、足元がふらふらしたりするようなことがありまして、血が薄くなっているのではないかと心配になりました。
血圧が高いことで体に悪影響を与える事はよく耳にしますが、低いことでの悪影響はあるのでしょうか、教えてください。また、血を濃くするためには、どのような事に気をつければよいでしょうか。
他の病気が原因の低血圧の場合は注意が必要
まず、低血圧と血の濃さについての質問ですが、血圧と血の濃さは直接関係ありません。
血が薄い、つまり貧血の状態というのは、血液中の赤血球の濃度が薄くなっている状態です。よくある貧血には、鉄が足りないために起こる鉄欠乏性貧血がありますが、この場合は鉄剤を飲んだり、鉄分を含む食材を多く摂取するなどで赤血球濃度を濃くする事ができます。しかし、貧血を改善したからといって、血圧が上昇するわけではありません。
低血圧のほとんどは、明らかな原因がない、体質によるものです。これといった症状もない事が多く、倦怠感、脱力、めまい、立ちくらみなどの症状が1割くらいの人に見られるという程度です。
実際、あなたのように、上が100、下が50くらいで、普通に生活をされている方は大勢います。確かに低すぎますと、元気が出ないという事もありますが、様々な生活習慣病の原因となる高血圧に比べたら、血圧は低めの方が良いのです。
一方、ごくまれに、他の病気が原因で、血圧が低くなってしまう場合があります。甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症などのホルモン異常や、心筋梗塞などで心臓の機能が低下してしまった場合などがそれにあたります。また、下痢や発熱などによる強い脱水状態も原因になります。この様な場合には、それぞれの状態にあった治療が必要になりますので、最近急に低血圧になり、何らかの症状があるような場合には精密検査が必要です。
それ以外には、起立性低血圧というものもあります。これは、寝ている状態や座っている状態から急に立ち上がった際に、血圧が急に落ちてしまい、めまいや立ちくらみを起こすものです。通常は、急に立ち上がったときでも、血圧を維持するために調整機能が働くのですが、加齢のため、あるいはパーキンソン病など脳神経の病気が原因で、そのような調整機能がうまく働かなくなり、血圧の保持ができなくなってしまうのです。
明らかな原因のない低血圧や起立性低血圧への対策としては、症状が強い場合には少量の昇圧薬を用いることもありますが、それよりも生活上の注意が重要です。ゆっくり立ち上がる、長時間たち続けない、塩分・水分を多めに取る、過食・飲酒を避けるなどを試みてください。
あなたの場合も、体質的な問題である可能性が高いと思われますが、症状もあるようですので、一度内科受診をおすすめいたします。特に原因となるようなものが見当たらなければ、あまり心配せずに生活されて大丈夫です。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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