医療と健康
健診で「肺気腫」との診断。タバコの影響?
5年前にタバコをやめたのに肺気腫と診断されました
72歳の男性です。先日、健康診断で胸のレントゲン検査をしたのですが、肺気腫かもしれないと診断され、CTで精密検査をしたところやはり肺気腫との事でした。
軽度の肺気腫とのことですので治療はせずに経過観察となりました。普通に生活している上ではとくに何の症状もないのですが、犬の散歩のあとなど、少し走ったりすると息切れが激しくなった気もいたします。
私は5年くらい前まではタバコを吸っておりました。今はやめておりますが、妻は相変わらず吸い続けています。
肺気腫は、やはりタバコの影響でしょうか。妻もやめさせた方が良いのでしょうか。また、運動などは避けた方が良いのでしょうか。
まずは受動喫煙を避け、適度な運動を
今回は肺気腫についてのご質問です。
ご存知の通り、肺とは空気を吸い込んで酸素を血液中に取り込み、代わりに血液中の二酸化炭素を取り出して体外へ排出する役割を持つ器官です。
その酸素と二酸化炭素の交換を担うのが、気管支の末端についた肺胞と呼ばれる小さな組織です。スポンジ状で、ブドウの房のような形をしており、肺の中に数億個も存在しています。
肺気腫という病気は、この肺胞の膨らみが壊れていき、どんどん集まって一塊に大きくなり、酸素と二酸化炭素を交換する機能が低下してしまう状態です。病気が進行した人の肺をCTなどで撮影をすると、肺の組織の多くが空洞になっているのが分かります。この肺気腫による肺の変化や、それ以外にも炎症を起こして気道が細くなったり、分泌液が増して痰が出るような状況を総合して、医学的に慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断をしています。
COPDの方の9割近くはタバコを吸っていた経歴があります。逆にタバコを吸っている方の1~2割はCOPDを発症すると言われています。
実は、同じタバコの量を吸っていたとしても、COPDが進行する方とあまり進行しない方がいます。これは遺伝的な素因が関わっていることが知られています。
COPDが進行してしまう体質の方は、タバコを吸い続けると肺がどんどん壊れてしまうため、やがて酸素を交換する力がなくなり、息切れなどの症状が出てきます。最終的には鼻からチューブで酸素を吸わなければなければならないほど肺の機能が落ちてしまいます。
今回のご相談者の場合、ご本人はタバコを止めておられますが、奥様が吸われているとのことです。この場合、副流煙による受動喫煙となってしまますので、肺気腫が進行してしまうことも考えられます。まずは受動喫煙が避けられるような家庭環境づくりが大切ですし、奥様自身も肺気腫があるのかどうか、健診で調べていただいた方が良いと思います。
逆に受動喫煙をうまく防止すれば、それほど急激な進行はないと思いますので、むしろ運動はしっかり行っていただいた方が良いでしょう。肺気腫の進行を止めたとしても、年を重ねるに従い筋力の低下が生じ、呼吸機能の総合力がどうしても低下します。呼吸をするためには胸を広げる筋力が必要になるので、筋力低下を防止するためにも適度な運動、とくに歩行を中心とした運動はぜひ続けていただきたいと思います。
肺気腫は症状が出て来た時にはかなり進行している場合も多いです。CT検査の場合、その前の段階で発見することが出来ますので、若い頃から喫煙をされているような方は、もちろん禁煙することが一番の予防策ですが、少なくとも定期的にCT検査を受けていただき、肺気腫の有無をチェックしていただきたいと思います。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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