医療と健康
椅子に座る時など少量の尿漏れが…
最近、尿漏れが気になるようになりました。
64歳の女性です。尿漏れについて教えてください。
最近、尿漏れが気になるようになりました。椅子に座ろうとした時や、荷物を持ち上げようとした瞬間に、少量なのですが尿が漏れてしまいます。
薬局に売られているパッドを付けているので、今はまだ困らないのですが、このまま放置すると、やがて尿漏れの量や回数が増えていくものなのか、不安です。
自分ではまだそれほどの年ではないと思っていましたし、他の病気は一切なく、病院にもかかったことが無かったのでショックです。尿漏れは、なにか薬で治るものでしょうか。それとも病院で診てもらうしかないでしょうか。
腹圧性尿失禁の疑い
「骨盤低筋体操」で改善も
尿漏れは医学的には尿失禁といい、高齢化によって増えてくる症状のひとつです。
尿失禁には様々なタイプがありますが、一番多いのは「腹圧性尿失禁」と言われるものです。たとえば咳やくしゃみをした瞬間とか、運動や重いものを持ち上げたりした際にお腹の中の圧力が上がり、それにより尿がもれ出てしまうタイプです。
尿は腎臓で作られた後、尿管を通って左右の腎臓を経て膀胱へと蓄えられます。そして膀胱から尿道を通り、体の外へと出て行くのですが、膀胱と尿道のつなぎ目部分に、尿の出口を閉めるための筋肉があります。その筋肉の働きによって、膀胱にたまった尿が漏れ出さないように出口がしっかりと閉じられているのです。しかし加齢と共にその筋肉の働きが低下してしまい、少しの圧力で尿が漏れてしまうのです。このタイプはとくに尿道の長さが短い女性に多く、女性の4割が悩まされると言われております。
尿失禁のタイプには腹圧性尿失禁の他にも「切迫性尿失禁」「機能性尿失禁」「溢流性尿失禁」があります。
切迫性尿失禁は、尿意を突然強く感じ、慌ててトイレに向っても間に合わずにもらしてしまうタイプで、これは神経に問題があり、尿意がうまくコントロールできないことから発生するものです。
機能性尿失禁は、正常に尿意は感じるものの、高齢化によって運動機能が低下し、トイレまで行くのに時間がかかってしまったり、認知症のためにトイレの場所が分からなくなってしまうなどでもらしてしまうタイプです。
溢流性尿失禁は、膀胱の出口が開きにくくなってしまい、自分では尿を出したいと思ってもうまく出せず、その結果、膀胱が満杯になって少しずつもれ出てしまうタイプです。代表的な例が前立腺肥大による尿失禁で、男性に多い症状です。
まずはご自身がどのタイプで尿失禁を起こしているかを知ることが大切です。今回のご相談者は女性で、腹圧性尿失禁の可能性が高いです。この場合、膀胱の出口を支える筋肉の「骨盤底筋」を鍛えることで、かなり改善することがあります。「骨盤底筋体操」などがありますので、ぜひご自身で調べていただいて試してみてください。
それでもなかなか改善しないような場合には、手術をする方法もございます。また、切迫性尿失禁のような、神経のコントロールが関係してくるような場合には、薬による治療が行われることがありますが、実際には腹圧性と切迫性の両方の要因が関係している場合も多いです。
原因を特定するためにも様々な検査を行って、尿失禁のタイプや重症度、膀胱の状態などをしっかり調べる必要がありますので、まずは泌尿器科をご受診ください。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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