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医療と健康

2024年02月27日

血をサラサラにする薬で「便潜血陽性」になる?

「便潜血」陽性は狭心症服用薬が原因?

 

62歳の男性です。私は以前より心臓の調子が悪く、たびたび胸が痛くなる症状がありました。そのため医者にかかったところ「狭心症」と診断され、現在はバイアスピリンという薬を服用しています。

ところが先日の健康診断で、便潜血検査が陽性になり、「要再検査」となってしまいました。これまでは便検査で陽性になったことなどはありません。

狭心症を治療するバイアスピリンは血液をサラサラにする薬だと説明を受けました。もしかすると、この薬のせいで便に血液が出てしまったのでしょうか。その場合は、再検査の必要はないでしょうか。

 

答え

まずは大腸内視鏡検査で大腸がんの有無を確認

 

今回は、狭心症の治療のために血が固まりにくくなるバイアスピリン(バイエル薬品)を使用している方から、検診の便潜血検査が陽性となったというご相談です。

 

バイアスピリンの主成分はアスピリンという物質です。アスピリンは「抗血小板剤」と言われ、血が固まりにくくなる作用がありますので、たとえ小さな出血でもなかなか血が止まりにくくなることがあります。そのため何らかの原因で大腸や肛門に出血が起きた場合、出血が長く続き、便潜血反応で陽性が出やすくなるということは確かにあります。

 

大腸がんというものは患部から非常に出血しやすいため、そこを便が通過すると血液が付着します。その便を採取して検査し、血液が混じっている場合は大腸がんがあるのではないかと間接的に推測するのが便潜血検査です。

 

このような仕組の検査のため、たとえば痔などで肛門から出血していた場合でも、便に血液が付いてしまい、検査の結果が陽性になることも多々あります。

しかし、その血液がどこから出血したものなのかを判断することはできないため、たとえ痔で血液が付いたとしても、血液がサラサラになる薬を飲んでいたことが原因だとしても、大腸がんの存在を否定することはできません。

逆に、大腸がんがあったとしても、便潜血反応が陰性になることもよくあります。

進行がんであっても陰性になることはあり、早期がんの場合は約半数は陰性になると言われております。

そのため、例えば便潜血検査が陽性のため、再度検査をしたところ陰性だったとしても安心してはいけません。

同じように、今回のご相談者のように、血液がサラサラになる薬を飲んでいたとしても、便潜血検査が陽性だった場合には、必ず大腸内視鏡検査を行って大腸がんの有無を確認することが大切です。

 

実は、今回内服されているアスピリンという薬には面白い効果があります。血をサラサラにするという効果の他に、大腸がんになりにくくなるという作用があることも知られているのです。

例えば、アスピリンを内服している方は、内服していない方に比べて大腸がんで亡くなる割合が少ないとか、大腸ポリープの再発が少ないなどの研究結果が出ております。

ご心配されているように、アスピリンの影響で便潜血検査が陽性になったという可能性も否定はできません。しかし、もし大腸内視鏡検査を受けて初期のがんが見つかったとすれば、アスピリンのおかげで早めに見つかったと言えなくもないでしょう。

 

いずれにしましても、便潜血検査が陽性であったなら、早めに大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。

 

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髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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