医療と健康
首のつけ根が腫れている女性。「甲状腺機能が高め」と言われ心配…。
がんへの進行が心配です。投薬治療だけで良いのでしょうか?
67歳の女性です。首が腫れる病気について教えてください。
以前より、首のつけ根部分が腫れている気がして、触ってみるとしこりのようなものがあることに気が付きました。
気になって検査をしたところ、甲状腺の機能が少し高めであると言われました。その後、飲み薬の治療を開始しましたが、飲み薬だけで本当に良いのか心配です。
甲状腺の腫れが、がんへと進行するようなことはないのでしょうか。ほかに合併症など、悪い影響は出ないものでしょうか。首はリンパ腺もあるので怖いため、ご相談いたしました。
バセドウ病の症状。甲状腺ホルモンが過剰分泌。
今回は首の腫れから甲状腺機能の異常を指摘された方からのご相談です。
甲状腺とは、縦3~4センチ、幅2センチくらいの大きさで、喉仏の下付近に左右一つずつ付いており、甲状腺ホルモンを分泌している器官です。通常、あまりはっきりとは存在を認識できませんが、病気で腫れているときに指で触れると分かることがあります。健康診断での診察の時にも甲状腺を触り、異常が見つかることも多いです。
甲状腺の異常は機能が低下する場合と、逆に高まる場合があります。あなたの場合、機能が高めだということで、甲状腺機能亢進症、または別名でバセドウ病と呼ばれる病気です。首の腫れから見つかったとの事ですが、ご高齢の場合は腫れが目立たなかったり、症状もはっきり現れないことも多いので注意が必要です。
甲状腺ホルモンというものは体中の多くの細胞に影響を与えており、主に細胞を活性化させる作用があります。甲状腺機能亢進症によってその活性化が異常に高まった場合、脈が速くなってしまったり、基礎代謝が上がるために体重が減ったり、汗をかいたり、神経が過敏になったりするなどの症状が現れます。また、眼球が少し前へ突出してくるような特有の症状もみられることがあります。
通常は命に関わるようなことはないのですが、甲状腺ホルモンの量が多くなりすぎると、人によっては体の筋肉が弱ってしまったり、手足の力が入らなくなる脱力発作が起きたりします。また高熱や脈が異常に早くなったり、意識がもうろうとしたりすることもあります。さらにごく稀ではありますが、感染症や何らかの強いストレスを受けた時、甲状腺クリーゼと呼ばれるショック状態になることがあります。そういう場合には緊急の治療が必要になります。
しかし、基本的には良性の疾患なので、ご心配されるようながんへの進行などはありませんし、甲状腺とリンパ腺とは場所が異なり、腫れ方も違いますので診断を間違う事はありません。
治療については、薬を一時的に飲めば完治するというものではありません。薬で甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑え、症状を和らげていくことになります。長期に渡る投薬治療になりますが、ホルモンの値が安定してくれば心配ないでしょう。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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