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医療と健康

2023年06月29日

高脂血症薬の服用で副作用?

体のあちこちが痛むような気がいたします。

63歳の男性です。以前より、会社で受けていた健康診断で高脂血症を指摘されていました。

最初のうちは、脂の多い食事を控えたり、運動習慣をつけるようにと指導されておりましたが、なかなか実行できずにおりました。今年の健康診断で、ついに治療が必要となり、コレステロールを下げる薬を服用することになりました。
1日1回服用を続けているのですが、最近、二の腕やふくらはぎなど、体のあちこちが痛むような気がいたします。運動はしていないのに、筋肉痛のような痛みが続くのです。薬を服用し始めてからですので、副作用なのでしょうか。

答え

副作用として稀に筋肉痛の症状
重篤な症状はごく稀

今回は高脂血症のため治療を開始されたという方からのご相談です。

高脂血症は、最近では脂質異常症という呼ばれ方をされ、その中でもとくに多いのは悪玉(LDL)コレステロールが高くなるタイプの方と、中性脂肪が高くなる方です。今回は悪玉コレステロールが高く、その値を下げる薬による治療を開始されたけれども、その後、体の痛みが出て心配され、ご相談をいただいたとのことです。

コレステロールを下げる薬で主に使われるのはスタチン(HMG―CoA還元酵素阻害薬)と呼ばれるタイプの薬で、悪玉コレステロールをしっかりと下げ、心筋梗塞や狭心症といった動脈硬化性の疾患を予防する効果が高いため、よく用いられています。
通常は安全に利用できるのですが、稀に薬が体に合わない場合に様々な副作用が生じることがあります。

このスタチン系の薬で指摘されることの多い重篤な副作用に、横紋筋融解症というものがあります。横紋筋というのは骨格筋のことを差し、この骨格筋の細胞が融解・壊死してしまうことで筋肉に痛みを生じたり、力が入らなくなったりする病気です。
症状がひどい場合には、大量の筋肉が壊れ、その成分が血液中に流出し、腎臓を傷つけてしまい、急性腎不全を引き起こします。さらに重篤の場合には命に関わるようなこともあります。
この横紋筋融解症はスタチン系の薬以外にも、ある種の抗生物質や向精神薬でも生じることが指摘されています。

しかしながら、この副作用が起こる頻度は非常に低く、筋肉痛が生じる程度は数%の頻度で。筋力が低下するような場合は1%以下、さらに重篤なものは0.08%程度ということが米国の調査で明らかになっています。死亡するような事例は100万人のうち0.15人程度とごく稀ですので、そこまで心配する必要はないのですが、放置して悪化した場合には重大な問題となるため、処方の際に注意が必要です。

今回は筋肉痛が出ているということですので、やはりスタチン系の薬による副作用が疑われます。まずは服薬を中止し、その結果、筋肉痛が軽減してくるようであれば、薬が体に合わないと考えられます。また、採血検査で筋肉由来の酵素であるクレアチニンキアーゼという物質の上昇があるかを確認することも有効な手立てとなります。

少し効果は弱くなりますが、コレステロールを下げる薬にはその他のタイプもありますので、もし副作用が確定的であれば他の薬に変更することが望ましいです。まずは早めに主治医に相談し、指示に従っていただければと思います。

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髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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