医療と健康
健診で「骨密度68%」という結果。薬による治療が必要でしょうか?
できれば薬による治療は避けたいのですが…
64歳女性です。先月、健康診断を受けた際、一緒に骨密度の検査をいたしました。
検査の結果、骨密度の値が68%で低いと言われました。それ以外に異常はありません。
薬による治療をすすめられたのですが、これまで大病をしたこともなく、医者の薬を使用するという事もほとんどありませんでした。
まだ60代ですし、骨折もしたことがないので、なるべくなら薬を飲みたくありません。骨密度68%というのは、どれくらい悪い数値なのでしょうか。食事療法などでは治らないものでしょうか。
薬物療法、食事療法、運動療法をバランスよく実施するのが大切。
今回は骨密度の検査で低い数値が出たという方からのご相談です。骨密度の測定は、皆様も聞いたことがあると思いますが「骨粗鬆症」を評価するために行う検査です。
骨粗鬆症とは、骨の密度が低くなることで骨がもろくなる病気であり、最も怖いのは骨折をしてしまう事です。とくに太ももの根元の部分が折れてしまう「大腿部頚部骨折」は、それをきっかけに寝たきりになってしまうこともあるほどです。また「椎体骨圧迫骨折」も多く、これは背骨の椎体に圧力が加わり、くしゃっと潰れるように骨折してしまうもので、かなりの痛みを伴います。そのほか手や足なども、ちょっと転倒しただけで骨折をしてしまいます。とくにご高齢になってからの骨折はADL(運動機能)やQOL(生活の質)を低下させます。要介護・寝たきりを予防するためにも、きちんと検査・治療を進めてゆくのは大切な事です。
骨粗鬆症の患者は女性に多く、年齢と共にその数は増えてゆきます。検査はX線や超音波を使い、骨の密度を調べ、同じ年齢層に対してどれくらいの骨密度か、若年成人と比較してどれくらいの骨密度なのか、その2つの比率がわかります。診断には、若年成人との比率を用いて たとえば骨折などがない場合でも、この値が70%以下の場合には骨粗鬆症と診断されます。今回、あなたは68%ということで、骨密度がかなり低下しているので、やはり骨折の危険が高い状態ということが言えます。骨密度70%以下が薬物療法の対象にりますので、もう一度専門の整形外科で詳しい検査をしていただき、その結果によっては薬物療法を考える必要があるでしょう。
薬物療法は、以前はカルシウム薬やビタミンDなどが使われてきましたが、最近では様々な骨を強くする薬が開発されています。そのような薬剤を使うと、より骨折を起こす確率が減りますので、骨粗鬆症の診断を受けた場合には薬物療法によって骨折を予防する事も検討してください。
また、骨粗鬆症は栄養状態や様々な生活習慣とも関係します。骨密度は運動をすることで上昇することも言われており、とくにウォーキングが重要です。飲酒や喫煙は骨折のリスクが高まると言われていますので、なるべく控えたほうが良いでしょう。痩せすぎると骨折が増加する事も知られているので過度なダイエットにも注意が必要です。
食事で重要なのは、骨の栄養分であるカルシウムはもちろん重要ですが、それだけでなく、ビタミンDも大切です。ビタミンDを多く含む魚などをしっかりと取ること。それからビタミンDは活性化させることで骨の形成を促します。活性化させるためには皮膚に紫外線を当てる必要があるので、積極的に外出をして日に当たることも大切です。
薬物療法、食事療法、そしてウォーキングなどの運動療法をバランスよく実施して、骨粗鬆症の改善に努めていただきたいと思います。
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- 髙谷 典秀 医師
- 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事
【専門分野】 循環器内科・予防医学
【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士
【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)
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