医療と健康
がん検診を受けましょう
コロナ流行に伴う日常生活の制限のなかで、最近気になるニュースがありました。それは新たにがんの診断を受けた患者の数が大幅に減ったというニュースです。
国立がん研究センターによれば、2020年の新規がん患者が、19年に比べて5.9%減少、人数でみると、19年は102万7,749人であったものが20年では96万7,088人と約6万人も減少したと報告されました。特に最初の緊急事態宣言が発令された最年5月に新規がん患者が大幅に減少したことが判りました。この新規がん患者の急端な減少はコロナ流行のために受診する人が減少したことは明らかです。実際、新たにがんと診断され治療を受けた患者さんも6万人以上減少していたということです。がんの種類別では、男性では胃がんや大腸がん、女性では乳がんと胃がんの診断が減っていました。いずれも初期症状が少ないがんであり、コロナによる受診控えが影響したと分析されています。
公益財団法人日本対がん協会は、新型コロナウイルス感染症の流行でがん検診の受診者が減少している実態を把握するため、全国のグループ支部の協力を得て2020年(1月~12月)の受診者数を調査しました。回答があった32支部が2020年に実施した5つのがん検診(胃、肺、大腸、乳、子宮頸)の受診者はのべ394万1491人で、2019年の567万796人から172万9305人減少し、対前年比30.5%の大幅減となっていました。この検診受診者数でも、特に昨年4月~5月にかけて大幅な減少が伺えます。このように、コロナ流行の影響によって、がん検診受診者数や新規のがん患者さんの発生が大きく減少していることが明らかにされたのです。
皆さんは、よく「万が一にもがんに罹った場合……」などということはありませんか?実はがんは「万が一に罹る」病気ではないのです。2018年データに基づくがんの統計によれば、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性65.0%、女性50.2%と「二人に一人は罹る」病気なのです。同様に日本人ががんで死亡する確率は男性26.7%(四人に一人)、女性17.8%(六人に一人)となっていて、いかにがんが流行っているかが御理解頂けるかと思います。
がんの中でどのようながんに罹っているかというと、男性では前立腺がん、胃がん、大腸がんの順ですが、女性では乳がん、大腸がん、肺がんとなっています。これが死亡数の順位では、男性では肺がんが最も多く、次いで胃がん、大腸がんとなります。一方女性で最も多く死亡しているがんは大腸がん、次いで肺がん、そしてすい臓がんが第3位となっていました。こうしてみると罹患するがんと死亡するがんには男女ともに差があり、特に男性の前立腺がんは罹患率は高いのですが、がんの性質や治療法の発達などによって生存率がかなり高いがんであることが知られています。
コロナの流行とは無関係にがんは一定の割合で発生していると考えられます。受診者の減少と各種のがんの発見率を掛けて推計すると20年の日本では少なく見積もっても1万人以上のがんが未発見になっていると思われ、がんの進行が進み治療の選択肢を狭めてしまいかねないことや、治療が遅れ生存率が悪化してしまう可能性があり、懸念されているのです。
コロナの流行下であっても必要な検診や医療を受けることは自分の健康と生命を守るために非常に大切なことです。厚労省は「必要な受診は不要不急の外出にあたらない」としています。特にがん検診を受けてない場合、早期発見の遅れは致命的な問題となりやすいのです。早期がんでは症状を出すことは非常に稀なことなのです。ですから日々特に問題もなく、体調が良くても、定期的ながん検診を欠かしてはいけないのです。
がんの早期発見が減ることによって私達の体内で早期がんがひっそりと進行がん、そして末期がんへと成長することとなります。検診はがん予防の第一歩です。是非皆さんもしっかり予防対策を考え、定期的な検診をきちんと受けて頂きたいと思います。
(www.kenko-niigata.com より引用)
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- 鈴木 隆雄 先生
- 桜美林大学 大学院 特任教授
- 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
- 超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
- 老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
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