趣味
2021年10月04日
「雲の影干竿の上を移るとき蜻蛉すばやく身をかわしたり」2021年10月入選作品|老友歌壇
老友新聞2021年10月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)
一 席
雲の影干竿の上を移るとき蜻蛉(とんぼ)すばやく身をかわしたり
荻野 徳俊
雲の影を敏感に察知して飛び立ったのでしょうか。蜻蛉の何気ない様子をよく観察して詠っておられます。
二 席
うち寄せて崩るる波の音遠し独(ひと)りの夜よ何もかも過去
松尾 勝造
「波の音」とすれば「聞こえる」は不要です。結句「何もかも過去」に作者の思いが凝縮されています。
三 席
玉音を聞きし仲間は皆逝きて令和の八月十五日ひとり
多田 シズモ
終戦の日を共に迎えた仲間は皆逝ってしまった。作者の八月十五日は、しみじみ「ひとり」なのです。
佳作秀歌
初夏(はつなつ)につばめ飛び交う日暮れ時遠くどこかで蝉の声する
小野塚 道恵
つばめが飛び交う初夏に、早やどこかで蝉が鳴いている。季節の重なりに心動かされます。
砂浜に寝ころび見上げる満天の星に昼間の暑さ忘れる
坪内 榮子
夕食後、浜に出て家族や近所の人と涼みます、と作者。風もまた心地良い事でしょう。
真白なる横断歩道の縞乱れコロナの朝を人渡り行く
福田 浩明
「横断歩道の縞乱れ」という着眼がいいですね。コロナで家に、と言われても出勤する人は大勢いるのですから。
あぶら蝉声を聞くたび暑さ増す短き命おもいきり鳴け
藤澤 忠男
「声を聞くたび暑さ増す」と思ってはいても、たった七日の命を思いやっています。結句「おもいきり鳴け」に胸を打たれます。
この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。
- 今注目の記事!