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2021年03月08日

「陽を背にし登りゆきたるこの山路我が影われを引き上げてゆく」2021年3月入選作品|老友歌壇

老友新聞2021年3月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)

一 席

陽を背にし登りゆきたるこの山路我が影われを引き上げてゆく

荻原 徳俊

自分の前に自分の影を映して登る山道。「我が影われを引き上げてゆく」と思うことが、辛い山道を登り切る力の源になったのでしょう。

二 席

来客かと思えど人の気配なく湿った雪の落下する音

坪内 榮子

三年振りの初雪は水分たっぷりの大雪でしたとの事。来客かと思う程の大きな音をたてて落下する雪。湿った雪質も伝わります。

三 席

初日さす花瓶に生けた松の葉に明るい未来願ってやまぬ

藤澤 忠男

新年のあいさつ歌。今年こそ明るい年であってほしいですね。

佳作秀歌

サンルームにも似たる縁側にて二人残り毛糸でソックスを編む

内野 光子

よく陽の当たる縁側で、お友達と編み物。「残り毛糸で」がいいですね。

しんしんと身をさす寒さ風の音ひとりの夕餉早めに終える

岸 慶子

寒さが身に沁む季節のひとりの夕食。「早めに終える」が一層寒さを強調しています。

無人駅枯れ野の闇を灯しいるこの沿線に多くなりたり

櫓木 香代子

枯れ野を灯す無人駅。そのような無人駅が多くなったと言うだけで、作者の感じる寂しさが伝わります。

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