趣味
2020年04月09日
「なみなみと注ぎし杯の酒の中に己の顔を見るは寂しき」2020年4月入選作品|老友歌壇
老友新聞2020年4月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)
一 席
なみなみと注ぎし杯の酒の中に己の顔を見るは寂しき
荻野 俊徳
お一人でのお酒でしょうか。それとも、賑やかな場所に居るからこその寂しさでしょうか。しんとした気持ちが伝わります。
二 席
辿り着きし宿より見える立石寺凍星(いてぼし)一つ岩に染み入る
倉澤 登美子
「辿り着きし」にやっと着いたという安堵が滲み出ています。下の句から、寒さと静寂が皮膚を通して伝わってくるようです。
三 席
蝋梅の香に誘(いざな)われゴミ袋両手にさげて道草をせり
宮本 ふみ子
思わず蝋梅の香りのする方に足が向いたのですね。ゴミ袋を下げてという現実的な描写が、情景を明確にしました。
佳作秀歌
如月の使者の如かる水仙の白きを姉の命日に供う
櫓木 香代子
「如月の使者」のような白い水仙。亡きお姉さんの姿も偲ばれます。
もういいか妻の遺品を整理する着ることなかりし衣類もありぬ
稲田 知司
なかなか遺品整理をする気になれなかった作者が、「もういいか」と亡き奥様に尋ねた気持ちがしみじみと伝わります。
桜花咲かせる春風の立ちて一気にかわる花の回廊
岸 慶子
春一番が吹いてそれまでの雰囲気が一変したのでしょう。花の回廊という語が読者の想像を美しくかきたてます
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