趣味
2016年05月01日
2016年5月入選作品|老友歌壇
一 席
何もかも包みかくして春を待つ岩手の雪を恨むこと無し
林 良一
雪国に住む者にとって冬は雪との戦いでしょう。その雪を恨まず、雪と共に静かに春を待つ作者の姿に共感を覚えます。
二 席
初夏(はつなつ)の舌に転がす干葡萄恋を知り初めし頃の苦しさ
福田 浩明
初夏という爽やかな季節と干葡萄という甘酸っぱさの中に、初恋のにがさ苦しさが際立ちました。
三 席
フウフウと熱いご飯に幼児は口をとがらせ北風を呼ぶ
葛西 ヤヨヒ
幼児だからこそ「北風を呼ぶ」と捉えたのでしょう。作者独自の感性、表現が活きています。
佳作秀歌
病む床に我が手を握り安らかに眠るが如く妻は逝きたり
金澤 忠男
奥様ご逝去の様子をよく詠われました。辛い事実ですが、詠って文字に留めておく事は大切なことと思います。
腰掛を引きづり引きづり二十五個のジャガイモ植えぬ西風(にし)ゆるむ日を
井口 照代
「腰掛を引きづり引きづり」という具体的な動作に、風景が見えるようです。
二年以上見舞い続けてこの日頃励ましの言葉見当たらなくなる
荻野 徳俊
ご友人かあるいはもっと近しい間柄の人でしょうか。病人ご本人も勿論ですが、見舞う人も辛いですね。
患者等は無言で集い夕日見る我も加わり身動きもせず
五木田 時子
「友を見舞う」と題された四首。どの歌にもご友人を思う気持ちが溢れています。
ぎしと鳴る豆狸の森の竹林春の日暮れに物の怪のごと
上田 昭子
「豆狸の森」という可愛らしい名前でも、日暮れにぎしぎし鳴ると怖いですよね。
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