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2018年08月27日

「山間の渓流の闇ふくらませ河鹿の声は宿包みゆく」2018年8月入選作品|老友歌壇

老友新聞2018年8月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)

一 席

山間(やまあい)の渓流の闇ふくらませ河鹿の声は宿包みゆく

王田 佗介

「渓流の闇ふくらませ」がなんともいいですね。その声と同時に闇にも包まれている静けさが、冷気を持って伝わります。

二 席

ふる里の領巾振山(ひれふりやま)の春霞ハングライダー飛び出してくる

櫓木 香代子

春霞のたなびく山と「ハングライダー飛び出してくる」の取り合わせが意表を突き、新鮮です。領巾振山という固有名詞も効果的です。

三 席

引き潮の行方を見せてたそがれの川は一片の木ぎれを流す

松尾 勝造

黄昏時の川の引き潮の様子を丁寧に描写しました。「一片の木ぎれ」に詩情があります。

佳作秀歌

戦争と共に思いしこの花の名前出でざるほどに老いたり

多田 シズモ

戦争と一緒に思い浮かべる花。その花も戦争の思い出も遠くなったのですね。

花咲けば病は治ると口にせし母は桜を待たず逝きたり

福田 浩明

作者にとってのお母様像をよく表しています。素敵な女性だったのでしょう。

高千穂の闇に漂ふ蛍火を生まれず消えし吾子(あこ)かとぞ見つ

青柳 忠良

同じ感慨を持つ方が多いと思いますが、宮崎県在住で高千穂を詠まれる作者であればこそともいえますね。初めてのご投稿でしょうか。どうぞお続け下さいね。

母の日に母の似顔絵描く子等のへへののもへじやさしき笑顔

荻野 徳俊

「母の日に母の似顔絵描く子等」は幸せな子供達。しかもやさしい笑顔で。

楽し気に大学生活語る孫笑顔で聞く吾に春日がそそぐ

鈴村 三保子

「春日がそそぐ」に作者の嬉しさがよく表現され、笑顔が見えるようです。

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