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2017年11月14日

「平和記念資料館前に「語り」聞くしんしんと鳴く木陰の蝉よ」2017年10月入選作品|老友歌壇

老友新聞2017年10月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)

一 席

平和記念資料館前に「語り」聞くしんしんと鳴く木陰の蝉よ

山岸 とし子

沖縄の平和記念公園を訪ねた際の歌。「しんしんと」に蝉の声と共に戦没者の声も聞く作者の感性が表現されています。

二 席

大いなる悩みひとつをほぐし得て向き立つ沛然(はいぜん)たるこの雨に

松尾 勝造

悩みがほぐれた時の気持ちをよく表現されました。「沛然」には「降る」の意が含まれるので、原作「沛然と降る」をこのようにしました。

三 席

廃屋の荒れ寂れたる庭隅に天へ向かいて昼顔の咲く

王田 佗介

荒れた庭隅と、天に向かって力強く咲いている昼顔との対照的な景が、作者の心を動かしました。

佳作秀歌

里芋の葉の露あつめ墨をすり短冊書きし兄妹四人

井口 照代

七夕の朝の、芋の葉に溜まった水で墨をすり字を書くと、字が上手くなったり作文が上手になるといわれています。

卒寿すぎ未だ手先は衰えず刺し子雑巾を日毎縫い継ぐ

石野 文子

刺し子の雑巾はきれいで、使うのが勿体ない程です。これからも縫い続けて下さいね。

年寄は惚けるくらいが可愛いと喜寿の息子がつぶやくを聞く

仲野 まつ乃

しっかりしすぎても……と作者。しっかりしているに越した事はありません。

桑の葉に射せる夕陽に空蝉が茶色に透きて光り輝く

荻野 徳俊

夕陽に光る脱け殻は、蝉の短い一生を思わせてちょっと物悲しくもあります。

最終の列車を待ちし君が影遠距離の恋重く果てなく

福田 浩明

遠距離の恋をしていた頃の思い出でしょうか。深夜の駅の空気までが伝わってくるようです。

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