趣味
2017年01月31日
2017年1月入選作品|老友歌壇
一 席
夜の海にただ一隻の観光船灯りいっぱい玄海を往く
多田 シズモ
灯りを煌々と輝かせて行く一隻の観光船。そこだけが明るいのです。詩情あふれる一首です。
二 席
夜の窓にきらきら走るモノレール『銀河鉄道』さながらに観ぬ
山岸 とし子
モノレールを見て、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を思い起こしたのですね。それぞれの人にそれぞれの銀河鉄道があります。
三 席
雨戸より光の束が射し込みて鳥のさえずりかすかに聞こゆ
福田 浩明
雨戸から差し込む「光の束」に、早朝の明るさ、新鮮さがよく表現されています。
佳作秀歌
夕暮れて帰れば寄り来る猫たちへ詫びを言いつつまず餌をやる
塩谷 千鶴子
餌をねだる猫たちと餌をやる作者の姿が、夕暮れの風景にくっきりと浮かんできます。
初雪が万物一切白く染め雲間にわずかお日様光る
葛西 ヤヨヒ
「万物一切白く染め」という強い表現に、北海道の雪の静謐さが込められています。
縁台に吊るし柿の映る影かすかに揺れるその影長し
荻野 徳俊
「吊るし柿の影」に焦点を絞ることで、秋の空気までも読者に伝わるようです。
吾が街も秋深まりて柿ひとつ名残惜しげに青空に映ゆ
阿部 サウ
一つ残った柿の朱色が空の青に映えます。柿は鳥のために一つ残しておくのだそうです。
引っ越して空き家と知りつつ通るたびもしやと振り返ると言う友
宮本 ふみ子
いないとわかっているのに、もしかしたらと思うお友達の気持ちが嬉しいですね。
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