趣味
2016年10月04日
2016年9月入選作品|老友歌壇
一 席
道幅も家並も変わりし路地裏に地蔵尊のみそのまま坐(おわ)す
松尾 勝造
時間の経過と共に変わる環境の中で、お地蔵さんだけはそこにそのまま、まるで時が止まったかのようにいらっしゃいます。
二 席
山裾に草刈る女へ道を問う方向示す鎌の輝き
荻野 徳俊
女性は鎌で「あちらですよ」と答えたのでしょう。今まで草を刈っていた鎌がまぶしく光った事が作者の心に残ったのです。
三 席
捨てかねて柱にもどす亡き夫(つま)が息子生(あ)れし日求めし時計
塩谷千鶴子
息子さん誕生の記念に求めた時計。古くなったけれど、どうしても捨てることはできませんね。
佳作秀歌
新聞を読みてただちに合掌す古き知人の逝きたる記事に
葛西ヤヨヒ
作者のように、陰ながらご冥福を祈っておられる方が多くいらっしゃるのでしょう。
疎まるる草にはあれどどくだみの真白き十字の花に魅せらる
石野 文子
葉に独特の臭気がありますが、花は美しいですね。「十薬」ともいうようです。
旅土産持ちて訪ぬる君が家の軒端に風鈴やさしく鳴りおり
王田 佗介
風鈴が優しく鳴っている家に住む「君」の姿を想像させます。
薄紅の合歓の花々空へ向きかすかな風にゆるく波打つ
多田シズモ
「ゆるく波打つ」が、たくさんの花を付ける合歓の花の様子をよく表現しています。
避難者はまだ七千余の熊本へ支援に孫は明日発つと言う
井口 照代
「まだ七千余」という具体的な数字が、被災地の現状を伝えています。ボランティアの方々に頭が下がる思いです。
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