老友新聞2023年11月号に掲載された俳句入選作品をご紹介いたします。（編集部）

天

白黒の石音響く夜長かな

王田　佗介

石音は碁を打つ音です。静かな夜長、どちらの音もよく聞こえますが、「白黒」の具体的提示によって、白を打つ音と黒を打つ音の違いを感じさせます。それは打つ人の心情の違いも物語っているかに思えます。

地

杉木立ゆるがす滝の水しぶき

鈴木　とく

水しぶき激しい豪快な滝です。辺りの杉木立に轟然と音を放っている様子が「ゆるがす」に籠められています。清涼感ひとしおの光景です。

人

きままとは時にさびしき今朝の秋

糸井　榮

独り暮しの人でしょうか、誰にも気遣う必要がない日々は気楽です。しかしこの自由は寂しさを伴うもの、夏から秋に移る季節にはそれを特に意識させます。