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2021年09月16日

「香りゆたかに 浅漬胡瓜 朝の食事の すすむ箸」2021年9月入選作品|老友都々逸

老友新聞2021年9月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。(編集部)

天の位

香りゆたかに 浅漬胡瓜
朝の食事の すすむ箸

勝亦 はる江

「朝食が美味しい」は健康のバロメーター(目じるし)ですね。

地の位

いっぱい行列 並んで待って
二度目の注射も 無事済んだ

藤本 洋子

高齢者優先の今回。(ほっとしました。コロナが終息することを祈ります)の添え書きに切実感があります。

人の位

帰りたいけど 今帰れない
「故郷の空」でも 口ずさむ

向井 智恵子

「夕空はれて秋かぜ吹き…ああわが父母(ちちはは)いかにおわす…」が「故郷の空」。ちなみに「故郷(ふるさと)」は「うさぎ追いし…」。どちらも懐かしい小学唱歌。

十 客

日の出の勢い 大谷選手
投げても打っても 走っても

王田 佗介

アメリカに渡ってロサンゼルスエンジェルス所属の大谷翔平くんは連続の月間MVP「投・走・打」の三刀流。スゴイですね。

秋田小町の ブランド米を
江戸川小町の 妻が炊く

山田 浩司

洒落がきつく、一歩間違うと嫌味になるところを、作者うかがのニヤリが窺えて、いい所に踏みとどまりましたね。

カボチャトマトに茄子(なすび)に胡瓜(きゅうり)
我が家の畑は 八百屋さん

鈴木 とく

農家の豊かな日々が平易な言葉で明るく表現されています。

暑中見舞いの 筆執(と)りながら
東京五輪も 胸過(よぎ)る

手銭 美也子

点けっ放しのテレビ…

メダル取る人 努力の化身(けしん)
四年たったら また逢おう

鈴木 曻

三波春夫の「東京五輪音頭」「四年たったらまた会いましょと…」の歌詞が懐かしい。次回はフランスのパリだ。

ゆらす風鈴 極楽からの
余り風ふく 夏の夜

岸 慶子

風鈴に当たる風を「極楽から余り風」と捕える感覚がいいまどきい。今時のクーラーや扇風機などとは違う「生活の豊かさの風」ですね。止めの「夏の夜」は再考されたし。

AI戦争 画像の中の
ことにしといて 人間ぞ

櫓木 香代子

AIとは「人工知能」のこと。NHKスペシャル「2030未来への分岐点『AI戦争』果てなき恐怖」。結句「人間ぞ」は「人間ですからね」と受け取りましたが、再考の余地あり。

愛の手料理 女房のお酌
酒は明日への 力水

惣野代 英子

初句・二句・結句にしっかりした名詞を据(す)えて座りの良い作品にしてあります。全体として、やや古調の感じがいなめません。

程度過ぎれば 熱さもにくい
普通が一番 むずかしい

小林 良一

「程(ほど)」の大切さを「気候さん」に諭(さと)しながら「人の生き方」への自戒としていますね。

笑いさざめく その後むなし
踊るカッポレ 涙して

岡本 政子

「かっぽれかっぽれヨイトナヨイヨイ」「沖の暗いのに白帆が見ゆる…」。紀伊國屋文左衛門の蜜柑船。踊りも付く活惚(カッポレ)が、笑いに始まり涙に終えるには、何か個人的な深いわけ訳があるのでしょうね。

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