趣味
「ハガキ一枚 手紙も書いて 独り暮らしを 世とつなぐ」2021年7月入選作品|老友都々逸
老友新聞2021年7月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。(編集部)
天の位
ハガキ一枚 手紙も書いて
独り暮らしを 世とつなぐ
向井 智恵子
結句の「世とつなぐ」が切ない。思えば、字を書き便りを綴れることこそ大きな宝物であり救いなのですね。
地の位
空気神社の 参道行けば
樹々の新緑 ふりそそぐ
菊地 幸子
「空気神社」は山形県の朝日山地にあり平成2年(1990年)創建で、主祭神は空気(日本唯一)。6月5日を「空気の日」、11月9日が「いい空気の日」(=「換気の日」)としている。
人の位
雨の潮来(いたこ)は あやめの名所
忍ぶ恋路の 蛇の目傘
惣野代 英子
潮来節「潮来出島の真菰(まこも)の中にあやめ咲くとはしおらしや」は船歌から座敷歌となり全国に広まった。都々逸のルーツである、という研究者も居る。今では蛇の目傘で恋路を忍ぶことは無理としても、古き日本の情景として胸に留めておきたい一つである。
十 客
見詰められても はて誰だっけ
思い出せない マスク顔
王田 佗介
「見詰められても」にかくれた部分の動揺が感じられて面白い。
山の中での ただ一軒家
コロナは来ないが 熊が出る
鈴木 とく
テレビの人気番組「ポツンと一軒家」を彷彿とさせます。色々な生活がありますね。
体にいいこと 毎日やろう
何はともあれ 散歩から
山田 浩司
「~立ってしゃがんでスクワット(=膝の屈伸運動)」という作も添えてあり、お元気さが窺えます。
我が娘(こ)に時々 母さんと呼ぶ
母の日祝える ありがたさ
手銭 美也子
母(作者)・娘・孫の立ち位置がよく判ります。皆、孫となっての呼び方を使って和気藹々。いい「母の日」でしたね。
祝いの生花か 喪に挿す花か
花屋のお花は わからない
勝亦 はる江
「花の命は短くて…」(林芙美子「放浪記」)と歌われずとも、花屋を出たお花は様々な運命を辿りますね。
青葉きらめく 川辺の茶屋に
卒寿の祝い ささやかに
藤本 洋子
長男夫婦と三人で黒茶屋弁当で、川の流れを見ながらお祝いをして来ました。と記されていた。美味しそうな黒茶屋弁当と、美しい川の多い八王子のどの川だったのかも知りたい。
愛しい愛しいと 相寄る心
コロな切なや テレワーク
鈴木 曻
昔、難漢字の覚え方に「戀という字を分析すれば糸し糸と言う心、という七七七五調(都々逸調)のものや、『櫻』のようにキッパリと「二貝(階)の女が木(気)にかかる」などと言うのもありましたね。
大きくなって お国の為と
今は花粉で きらわれる(杉)
岡本 政子
「お山の杉の子」「昔昔その昔椎の木林のすぐそばに小さなお山があったとさァあったとさ…(吉田テフ子・サトウハチロー作詞)」が、「~大きくなって国の為お役に立って見せまするゥ見せまする」となるのでしたね。
金は無くても 命はあって
共に白髪の 爺(じじ)と婆(ばば)
黒木 弘
私を含めて、ほとんどの高齢者は低所得者です。連れ合いが居るから共白髪。それで充分じゃありませんか?
きつねの嫁入り 雨大粒で
フロントいっぱい 前見えず
天野 照華
天気雨のことを「狐の嫁入り」と言いますね。突然の大さば雨でハンドル捌き(操作)も命懸けですね。
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