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2021年06月21日

「築地松刈る 庭師の技で 散髪したよな 家周り」2021年6月入選作品|老友都々逸

老友新聞2021年6月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。(編集部)

天の位

築地松(ついじまつ)刈る 庭師の技(わざ)で
散髪したよな 家周(まわ)り

手銭 美也子

築地松は出雲平野に見られる独特の屋敷林。川の氾濫に備えた盛土に広葉樹や竹が植えられ、大きな壁のような独特な形に刈り込まれる。強風や西日さえぎを遮るため、北と西の二面に設けることが多い。

地の位

草に寝転び 真っ逆さまに
落ちてくる空 春の空

王田 佗介

草に仰むけに寝ころぶ中に、春の空の急降下を表現して楽しい。

人の位

春の優しさ いつでもいいね
心の豊かさ 思いやり

天野 照華

「4月13日は誕生日です」の添え書きをしての作品。春の歓びが、ご自身のお誕生日によって増幅されるのですね。

十 客

母が丸めた ぼた餅嬉し
遠いあの日は 父も居た

向井 智恵子

遠いあの日あの頃。父母が懐かしい、恋しい。

無理はしないで 達者でいてと
情け嬉しい 娘(こ)の便り

惣野代 英子

お嬢さんの真情がお便りに込もっていますね。

あった あったよ お母さんにも
孫に答える 反抗期

岡本 政子

祖母・母・孫の三代に渡る話が出来るのは祖母=おばあちゃんだけですね。

藤の長房 波打ちゆれて
其の上鯉が 泳いでる

勝亦 はる江

池の波に映る藤の花房の上を泳ぐ鯉。影と実体の重なりの発見に感動を覚えます。

梅雨の晴れ間を 色とりどりに
咲いて紫陽花(あじさい) 丹波路(みち)

岸 慶子

ご生活地を心から愛して詠まれていますね。

お前百まで わしゃ九十九まで
私とっくに 百才(ひゃく)過ぎた

鈴木 とく

共に白髪の生える迄、と続く都々逸に見事なご返答!

多摩御陵まで 桜が続く
花見に集まる いい笑顔

藤本 洋子

多摩御陵=大正天皇陵は八王子市にある。桜も然ることながら高さ20メートルのケヤキの木160本も壮観。高尾駅からの徒歩がいい。

筆で摘みとる 芍薬牡丹
至福ですよと コロナなか

櫓木 香代子

新型コロナ騒ぎなど何処吹く風のご環境。「立てば芍薬座れば牡丹…」は古来美女の形容ですね。御作、何故「筆で摘みとる」のかご教示いただければ幸甚です。

さようならとは 淋しい言葉
帰りせつない 夜の道

黒木 弘

「淋しい」「せつない」「さようなら」を「夜の道」にかぶせた古典的手法ながらぴったりと決めてお見事。

私の人生 失敗だらけ
も一度ティーンに 戻りたい

鈴村 三保子

恐らく男女を問わず半数以上の人が同じ思いを抱いているのでしょうネ。

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