趣味
2016年03月03日
2016年3月入選作品|老友都々逸
天の位
世界遺産に朝日が差して
富士の高嶺の雪化粧
松本 タケ
どの世界遺産? と思う読者に雪化粧の富士山を登場させた。世界遺産になって当然と思っている多くの日本人の心に朝日が差した。富士よりも先に世界遺産に朝日を当てた詠み方が巧まずして歌体の整えとなった。
地の位
除夜の鐘きき酔客帰りゃ
柚子が湯船で待っていた
三橋 ユキ
柚子湯は冬至の夜だけでなく健康の為、いつでも使っていらっしゃるのだ。お帰りになった年越しのお客のあと、冷えた身体をまるで待ってでも居てくれたかのように柚子が湯船に浮いている。歌の中で柚子に持たせた仁あくがほのぼのと慰めてくる。
人の位
帰省する子の喜ぶ顔を
おでん煮て待つ年の暮
石野 文子
帰る子も迎える母もどんなに待ち遠しく嬉しい年の瀬だろう。おふくろの味がおでんにも下の句全体にも染みわたっている。勿論、正月料理の御節はぬかりなく出を待っている。
十 客
朝の茶柱嬉しい予感
見事当たった宝くじ
惣野代 英子
猿の番(つがい)が湯ぶねに浸かり
可笑しサロンのカレンダー
高木 まつ
母に甘えてゆっくり朝寝
からだ休まる里帰り
飛田 芳野
どうかピンピンコロリと願い
今朝も供えるお仏飯
向井 智恵子
丈夫で居たいと帽子をとって
獅子に噛ませる禿げ頭
平岩 平岩
若い若いとみんなに言われく
ついついその気で見る鏡
葛西 ヤヨヒ
科(しな)を作って流し目ポーズ
お茶飲む女房の大笑い
王田 佗介
五臓六腑の緊張ゆるめ
詩吟ろうろう仕舞風呂
大西 和子
重い気分がふっとぶ様な
なにか奇抜が欲しい今
岩崎 ますゑ
墨の香りが部屋いっぱいに
漂う乙女の筆初め
手銭 美也子
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