天の位

過疎の村道賀状をのせて
赤いバイクの走る音

王田　佗介

元旦配達の年賀状らしい雰囲気を晴れ晴れと表した。バイクの赤の当然も際立って芽出度い。過疎の村道も暖かく日が射している。

地の位

兄から届いた宅配便の
底の地方紙じっと読む

向井　智恵子

荷物そのものも然(さり)乍(なが)ら…。昔、ヨーロッパの画家達が日本からの陶器類の詰め物として使われた北斎や広重の版画に感動して自作に描き込んだ話はあまりにも有名。

人の位

人生悔なし喜怒哀楽を
全部味わうパラダイス

三橋　ユキ

自人生を全て肯定してパラダイス＝楽園とした大らかな表現に魅かれる。なかなか手放しでこうは言えないものだ。

十　客

呆けてたまるか呆けない工夫
生き生きサロンのボランティア

仲野　まつ乃

何時が最後か知らないけれど
お呼びがあるまで生きてみる

福田　浩明

雲も埃(ほこり)もさらった風に
残してもらった星の空

勝亦　はる江

ひとりぼっちを支えてくれる
謡は心のより所

飛田　芳野

名句名案振っても出ない
打出の小槌も齢をとる

古賀　房子

ヒフのガンかと出て来たシミにく
医者はひとこと加齢です

山田　浩司

綺麗とほめられ白髪のわたし
冬の帽子が良く似合う

葛西　ヤヨヒ

寒さめげずに健気に咲いた
黄色水仙愛らしい

高木　まつ

赤の信号無視して走る
風邪と落葉のラプソディ

大西　和子

八十二路おかげのあなたと私
家族揃って屠蘇を酌む

手銭　美也子