老友新聞2017年11月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。（編集部）

天の位

手押し車を頼りに散歩
決めたコースを三千歩

岩崎　ますゑ

手押し車での三千歩が尊い。色々な所へ行くようでも決めたコース、決められたコースを毎日行くのが人生のような気がします。

地の位

今朝も元気にお経がよめた
良い日になるようなれるよう

鈴村　三保子

我が家の前がお寺で毎朝、読経の声が響いて来ますが私はお経をよめません。しかし、いつも清々しさを感じています。

人の位

性に合ったか都々逸作り
指を折り折り捻（ひね）り出す

鈴木　曻

絃（いと）に乗らずとも心の琴線に触れさえすれば吟遊詩人です。三才三章共、気取りの無い作が採れました。

十　客

この電話　切れば失う友かも知れぬ
初めて聞くよにする返事

仲野　まつ乃

月を隠したノッポのビルの
中で残業都会の夜

大西　和子

天に弓引く翼も凛々し
ウサインボルトのニケポーズ

櫓木　香代子

水を求めて塩辛とんぼ
秋の装いいわし雲

高木　まつ

白い素肌にまとわりついて
湯加減如何と丸い月

惣野代　英子

宿の浴衣に思い出残し
夢をたたんで発つ二人

飛田　芳野

テレビ見ながら本読み乍ら
昔乍らの団扇風（うちわかぜ）

大石　志津江

米を研ぐとは死語なのかしら
米を洗うと孫が言う

向井　智恵子

夢を誓った三本松は
今も達者か風の盆

福田　浩明

登る朝日に両手を合し
拝む姿の老い二人

横山　一雄