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2016年11月24日

2016年10月入選作品|老友都々逸

天の位

暑い日でした夾竹桃の
花が咲いてた終戦日

飛田 芳野

暑い日でしたね。私には集団疎開先の旅館の中庭に教員、生徒全員集まっての玉音放送でしたが、作者は紅い夾竹桃の花にその日を止めました。視覚と聴覚の違いはあっても、張りつめたものが張りつめたまま負けを受けとめた日でしたね。終戦日という固有名詞の持つ重みが全てを支えています。

地の位

世辞と知りつつ若いと言われ
少し明るい紅をひく

石野 文子

お化粧や口紅の色の違いなど全く不知ながら、素直に理解できます。言葉遣いや言葉並べにも破綻が無く、平易な心の起伏が都々逸的で、詠み手に受け入れられ易い調べになっています。

人の位

余生人生呑気で気さく
笑い取り柄で字は苦手

高木 まつ

座五で自己詠と判るので「気さく」は「気まま」にしましょう。「字は苦手」とありますが、分かり易く綺麗で真直なお人柄が滲む字です。自己描写の距離感が心地よく、知性が漂っていて洒落ています。

十 客

秋の夜長にミシンを掛ける
母のやつれた影法師

福田 浩明

音の泉を豊かに浴びる
調律おわって聞くピアノ

向井 智恵子

北の街にも暑さがめぐり
祭りばやしの弾む音

葛西 ヤヨヒ

湯から上った女房の背を
拭いて包んで山の宿

王田 佗介

離合集散この世の習い
明日の総理を夢に見て

平澤 英一

若さぶつかる合宿ごろ寝
夢は空へと高く跳ぶ

大西 和子

真夏の太陽カンカン照りに
カンナサルビア燃え上がる

勝亦 はる江

生きる目標五輪に決めた
それを冥土の旅土産

大石 志津江

人の心もお部屋の中も
開けっ放しで丸く住む

岩崎 ますゑ

回忌百年御蔭の曾孫
合わす読経の夏座敷

手銭 美也子

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