老友新聞2024年5月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。（編集部）

天の位

小さく千切った　野菜に蜜柑
誤嚥肺炎　護る為

櫓木　香代子

若い頃は胸や咽喉（のど）に閊（つっか）えることなど皆無だったのに、野菜や蜜柑など迄、千切ってから口にする齢になってしまった遥かな歳月…。

地の位

伊豆の山焼　河津の桜
車窓から吹き込む　春の色

倉澤　登美子

早咲きで人気の「河津桜」。河津桜まつりは河津町内、約８千本、河津川沿いの４㎞がピンク色に染まります。今日は徒歩で無く、車からのお花見ですか。

人の位

雪の降る夜は　しんそこ冷えて
キムチ牛なべ　うどん入り

菊地　幸子

雪国の皆さんの、寒さ凌ぎの食べ物。キムチ鍋、牛鍋…などに、今日はうどんを入れましたね。心の温まる冬のお食事風景ですね。

五　客

世界を相手に　大谷選手
何所に行っても　サイン攻め

鈴木　とく

人柄の明るさと背の高さ。日本人としての身贔屓（みびいき）もありますが、私もいつもテレビの彼を嬉しく見ています。

あはれプーチン　知らぬが仏
きっちりあの世は　あるからな

佐野　磯雄

ロシアの大統領プーチンは、今やウクライナへの軍事侵攻で１３９人の死者（４月５日現在）を出したのに、テロ関与を否定していますね。

愛だ恋だは　はるかな昔
旅のどこかで　置き忘れ

王田　佗介

「人生という旅」を生きるのが「人間」。置き忘れた気がする程、遥かな昔でも愛や恋は人を支える何かに成っている筈。

一家揃って　浜辺に並ぶ
のたりのたりと　蕪村の句

手銭　美也子

画家与謝蕪村は江戸中期の人で、代表作の俳句を「春のひねもす海終日のたりのたりかな」とされている。選者の私はこの句碑を見ていないが、この歌の「一家揃って」は手銭さん御一家と考えて採ったが、違っていたら御勘弁を。

人馬同居の　昔の農家
今は馬居ず　耕運機

小林　良一

人類は永く、馬や牛たちの世話になって生活を支えて来ましたね。