老友新聞2023年9月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。（編集部）

天の位

ふたつ買ったら　送料無料
テレビ通販　乗せられる

山田　浩司

売り手はプロ。つい口車に乗せられますね。昔、盛り場などには叩き売り師が居て、「持ってけ泥棒！」の科白（せりふ）で売捌いていましたね。

地の位

今日も暑い日　外には出るな
三十九度越す　八王子

藤本　洋子

八王子市は東京都内で、いつも気温の高さを言われる市ですね。お大事にお過ごし下さい。

人の位

あら今日はと　言ってはみたが
見れば向うも　けげん顔

岡本　政子

ある、ある。擦れ違いざまにした会釈で、よくそんなことがありますね。上手に歌として捕えましたね。

五　客

南部風鈴　鳴らして過ぎる
極楽から吹く　余り風

岸　慶子

風鈴に当たる風は、極楽から来た余りではないか、と思える程心地よいものなのですね。

テレビ　新聞　毎日報ず
カブと　大谷ホームラン

小林　良一

私は株の売買はしていませんが、やればきっと真剣になり面白いものなのでしょうね。

三十九・七度を記録
こんな地球に　誰がした

王田　佗介

風邪っぴきの体温ではなく気温です。思わず、戦後直ぐに流行った売買婦の唄のような台詞が口を突いて出ましたね。

安否確かめ　メールを交す
速くおさまれ　暴れ梅雨

手銭　美也子

知人や家人の安否が気になる程の大っ降りの雨。掛手と受け手の両者の手許にある確かなものはメールだけなのですね。

そろたそろたよ　早苗がそろた
梅雨の田んぼは　賑やかよ

櫓木　香代子

歌の後半は「路（みち）の小草にもアレサ米がなるよ。」と続きましたね。