老友新聞2023年3月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。（編集部）

天の位

ゆるんだ絆の　結び目直し
夫と歩いた　下り坂

倉澤　登美子

過去進行形という表現技法で懐古の情を、優しく懐しく表現していますね。

地の位

明けて新年　初満月を
眺め　静かな二人酒

王田　佗介

初満月という言葉を初めて知りました。少し寒そうですが素敵なお酒の場ですね。

人の位

家の中には　大黒柱
でんと居座る　妻一人

山田　浩司

この奥さんが居らっしゃるから苦労の少ない日常が在るんじゃありませんか？

五　客

似合う振袖　二十歳の孫と
米寿賜る　明けの春

手銭　美也子

お孫さんのご成人と同時にご自身の米寿。新年のお喜びが目に見えるようです。

阿炎（あび）の張り手の　太くて長い
倒す一撃　目指す「綱」

櫓木　香代子

大相撲。阿炎ファンとしては「目指せ綱」なのでしょうね。

何を食べても　おいしく食える
やっぱり女房は一番だ

小林　良一

健康で、女房誉めが出来れば、人生何も言うことはありませんね。

喧嘩しつつも　凭（もた）れつ暮し
早いもんだね　六十年

鈴木　曻

「凭れつ」がいいですね。二十代でご結婚なさったとして、お二人共八十代後半以上。人生百年時代のお手本になってください。

雪の富士山　三國一よ
滝の白糸　三保の松

鈴木　とく

他県の民謡、越中八尾のおわら節にも「駿河の冨士山三はや国一だよ」と囃されている。