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コラム

2021年10月15日

「マスクいろいろ」~マスクの扱い方も美しく…

(本稿は老友新聞2020年7月号に掲載した当時のものです)
マスクが取り沙汰されている。新型コロナウイルス感染予防のためなのだ。
12月にコロナの情報が流れた時、こんなに強力な悪魔だとはぴんと来なかっただろう。しかし、今や全世界をつつむ強力な災難となった。
今や日常は非日常となって、全世界のこの平凡な暮らしをしていた人達をこまかく規制することとなった。
外出から帰ったら手を洗う。消毒、大勢が集まって大声を出したりしないなど、非常事態の日々だ。
マスク常用は、しぶきが飛ぶことを止めようというもので、今や世界中の人がマスクをしている。

私はマスクを過去常用していなかった。
いよいよマスク常用が国家の指示となって、マスクをしなければならなくなる。
まず毎朝つけていた口紅は禁止。つくづく私の顔はマスクが似合わない。マスク体験第一号は、顔面にぴったり来ない。

それにマスクにもいろいろデザインがあることを知った。
もたもたしている間に、世界的にマスク不足になり、市場を狭くした。
商品としてのマスクは、日本製、中国製を問わず、やや大きかったり小さかったりなど、オートクチュールとは違う。フィット感がない。

やがてタクシーの運転手さん達は
「めがねが曇ります」
「両耳の後にゴムの痕がつきます」

慣れていない人達は、節約のためにも会社から配られるマスクをしているのか、フィット感がないのだろう。
私の場合は、職場に行くまでつけていく。サロンへ行ったら外す。そう使い分けていた。

親しい商社の人は、SARSの時にマスクを作りすぎて売れ残って、在庫になり失敗した。そのためコロナの際は少なくしたら注文殺到で、今度は足りなくなったという。

私もようやくマスクを使いこなして、小さい顔にやっとぴたっと来るようになった。
マスクの困ったところは、相手の表情が見えないこと。 笑っているのか怒っているのか、感情が解らない。まして、毎日出社の時と帰宅の時はマスクを取って挨拶したい。

しかし6月に入って、暑い夏が始まろうという日。暑い日はマスクを取った方が良いと、態勢が変わった。
ああ嬉しい、と思ったら。なんと無意識でマスクをしていたことが何回かあった。人間の健康を守るためとはいえ、あの小さなマスクが地域の庶民の生き方を変えた。

パリコレやオートクチュールとは無縁、健康に関心のある人やマスクに関心のある人かどうか、顔を見ればわかる。残念なのは可愛い笑顔も幸せな笑顔も、マスクは隠してしまうことだ。
とはいえ茶道では、貴人にはマスクをしてお茶を差し出す記録もある。奉納の祇園茶会では、家元が貴人の前でお茶を点てるというのも夏の日の風景だ。
ということは、マスクも扱い方を美しく、だ。
(本稿は老友新聞2020年7月号に掲載した当時のものです)

 

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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