コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
2022年01月12日
「平和」を主張する五輪開会式では国家元首が「不戦の誓い」を宣言するべし!
米国のバイデン大統領は、2月4日~20日開催の北京オリンピック冬季大会に選手団は派遣するが、政府関係者の派遣は中止すると発表した。いわゆる外交的ボイコットだ。
中国政府のウイグル族への人権弾圧などに対する抗議で英国、カナダなど数カ国が追随。中国は「スポーツに政治を持ちこむ行為」と非難。国際オリンピック委員会(IOC)は政治的に中立だから「この決定を尊重する」と静観の構えを見せた。が――。
そもそもオリンピックは「政治的に中立」と言えるのか?
開会式での開会宣言は「その国の元首が行う」と五輪憲章で定められている。IOCが主催し、開催の認められた都市で開かれる大会に、中国の習近平国家主席などの国家元首が登場するのは「政治的」と言えるのではないか?
かつて1936年のベルリン大会ではナチスの総統ヒトラーがドイツ元首として開会宣言を行った。この大会はナチスのユダヤ人弾圧に抗議するボイコットの声が高かったが、後にIOC会長となるブランデージを団長とする現地調査団が、「ユダヤ人迫害は存在しない」と間違った結論を発表。その結果大会は開催され、ナチスドイツが強い国力を世界に示すことで自信を得て、第2次世界大戦へとつながったと言われている。
冷戦時代にはソ連(ロシア)のアフガニスタン侵攻を巡って西側と東側諸国がボイコット合戦を展開するなど五輪では政治的事件が続発。
それはIOCの姿勢が中途半端だからだ。オリンピックは「世界平和・差別反対」などを五輪憲章で唱えている。ならばIOCは、開催国元首に開会宣言と同時に「不戦の誓い・差別反対。人権尊重」なども宣言させるべきだろう。それこそ政治的中立であるIOCの役割のはずではないか?
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