コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
2021年12月10日
「五輪貴族」は「中国より」の体質を持っているのか?
プロテニスプレーヤーで女子ダブルス世界ランキング1位にまでなった彭帥さんが、中国共産党幹部の張高麗元副首相に不倫関係を強要されていたとの告白をインターネットに投稿。その後消息不明となっていた事件は、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長がテレビ電話で無事を確認……と発表したが、中国政府の人権抑圧疑惑は晴れず、2022年2月の北京冬季五輪ボイコットの声が高まった。
過去にもこれと似た事件があった。1936年ナチス・ドイツによるベルリン五輪大会だ。ナチスによるユダヤ人迫害が問題となり、IOCは調査団を派遣。その団長が米国オリンピック委員会(USOC)会長で、後にIOC会長となり、東京五輪や札幌冬季五輪の開催に尽力したアベリー・ブランデージだった。
彼の調査ではナチスによるユダヤ人迫害など存在しないと結論づけ、五輪ボイコット論は消えた。が、近年の調査研究で、実はブランデージ自身が反ユダヤ主義思想の持ち主で、ヒトラーとナチスを《独裁体制は最も効率的な統治システム》と絶賛する文章まで残していたことが判明。
さらに彼は女性のスポーツ参加に反対する女性差別主義者で、政情不安のアジアから美術品などを不当な安価で獲得する植民地主義者、黒人の人権運動も弾圧した人種差別主義者だともわかった。
彼だけでなくサマランチ元IOC会長も、ナチスの友党のスペイン右翼ファランヘ党の党員で、オリンピック生みの親のクーベルタン男爵自身も女性がスポーツを行うことに反対する女性差別主義者。
こんな「IOC貴族」の体質は否定され、バッハ会長は中国寄りの姿勢を反省し、五輪の理念に反する中国の反人権的行動を諫めなければならないはずだが…。
この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。