コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
2021年03月02日
中国政府のウイグル族「ジェノサイド」で東京・北京両五輪大会ともに中止?
新型コロナ感染が収まらず、今夏の東京五輪の開催が危ぶまれるなか、その半年後の2022年2月に開催予定の北京冬季五輪に対してコロナ以上の衝撃を伴う発言があった。
1月19日、アメリカのポンペオ国務長官(当時)が「中国政府は新疆ウイグル自治区でウイグル族にジェノサイド(集団虐殺)を行っている」と語ったのだ。
中国政府のウイグル族への「民族弾圧」については、これまでもチベット族やモンゴル族への弾圧、香港市民の民主活動への弾圧とともに世界の人権団体が中国政府に抗議文を送ったり、IOC(国際オリンピック委員会)へ北京冬季五輪の開催再考を求める書簡を送ったりしていた。
が、今回ポンペオ氏が用いた「ジェノサイド」という言葉には「弾圧」という言葉をはるかに上回る意味がある。それはナチスのユダヤ人虐殺(ホロコースト)などを表すときに用いられる言葉(民族浄化と訳されるときもある)で、中国事情に詳しい人は、ウイグル族の若い女性は居住地を移され、百万人以上の男性が逮捕・拘束され、子孫を残せない状態(2世代で民族が抹殺される状態)だと語る。
バイデン政権下のブリンケン新国務長官もポンペオ発言に賛同。中国政府のウイグル族への「人権弾圧」にはローマ法王も昨年出版した自著で懸念を表明したくらいだ。
そんななかで菅総理は「新型コロナに打ち勝った証しとして東京五輪を開催」と繰り返す。が、「コロナに打ち勝った証しを中国に奪われたくない」というのが本音だろう。
ならば東京・北京両大会とも新型コロナで連続中止という決着が、日本も中国も傷つかずに済むという人もいる。五輪は、スポーツ大会ではなく「政治」ですからね。
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