コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
新型コロナで改めてわかる! 五輪とは政治的イベントだ
11月中旬、IOC(国際オリンピック委員会)バッハ会長が来日。菅義偉総理、小池百合子東京都知事、森喜朗東京五輪組織委会長と会談。「来年の東京五輪は、観客を入れて開催する」と断言した。
新型コロナの世界的蔓延のなか、どんな根拠で「開催可能」と言えるのか? 少々首をひねるが、IOCと日本側主催者は「開催」を「宣言」せねばならない事情があった。
というのは開催が1年延期となり、3千億円規模の追加費用が必要となった結果、約70社あるスポンサー企業に、契約延長をしてもらわねばならなくなったのだ。が、コロナ禍で多くの企業も経営は火の車。世界全体で1兆円以上の損失を出している航空業界の日本航空は最大2千700億円の赤字。全日空も5千100万円の赤字が見込まれ、地上勤務の職員などに家電販売会社などへの一時転職を手配している両社が、東京五輪のオフィシャル・パートナーとして新たに約20億円の協力金を(値下げされるとの噂もあるが)出せるとは思えない。
おまけに新型コロナがほぼ終息しても、影響が少しでも残れば、五輪の選手村や各会場のために必要とされる約5千人の医療従事者(医師や看護師)を、関東一円の病院から集めることができるのかどうか? しかも5千人という数字は、熱中症対策から導き出されたもので、新型コロナのPCR検査等に必要な人数が上積みされれば、バッハ会長が口にした「ワクチンが間に合わなくても開催可能」などと能天気なことは言っておれなくなるはずだ。
それでも東京五輪開催を望むIOCと日本は、たぶん半年後の中国北京の冬季五輪大会に、「コロナに打ち勝った栄誉」を奪われたくないのだろう。なるほどオリンピックとは政治的イベントなのだ。
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