コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
新型コロナウイルスで五輪を呪っているのはクーベルタン男爵?
新型コロナウイルスの世界的蔓延で東京五輪は翌年への延期が決まった。この事態を麻生財務大臣は「呪われたオリンピック」と表現した。不穏当な言い回しはさておき、たしかに五輪は「40年ごとに呪われている」。
40年前(1980年)のモスクワ五輪はソ連(現・ロシア)のアフガン侵略で、西側諸国がボイコット。その40年前(1940年)も東京開催が日中戦争の激化で返上。代替地のヘルシンキにソ連が侵略し、第二次世界大戦勃発で開催中止。麻生大臣は指摘しなかったが、その40年前(1900年)のパリ大会も半年間の万国博覧会の添え物程度で注目されず。しかも次のセントルイス大会(1904年)も万博の添え物となり、「呪われた」のは「40周年期」だけではない。
第一次世界大戦でも1916年ベルリン大会が中止。20年後のベルリン大会はナチス・ドイツの悪名高い宣伝大会となり、この大会から始まった聖火リレーは、ナチスのスパイ行為だったと言われている。
モスクワ大会の次のロサンゼルス大会は、今度は東側諸国が報復のボイコット。モスクワ大会4年前のモントリオール五輪でも、南アフリカの人種隔離政策(アパルトヘイト)に反対し、アフリカ22か国がボイコット。
他にもボイコット合戦は何度も起こり、1968年メキシコ五輪直前には反政府デモを政府軍が機関銃で鎮圧。2~3百人が死亡。1972年ミュンヘン大会ではテロリストによる9人のイスラエル選手人質殺害事件まで起きた。
五輪の父クーベルタン男爵は次の言葉を残した。
「私が百年後に生まれたなら、オリンピックをぶち壊すだろう」
オリンピックの目的(スポーツによる世界平和)は程遠く、大会は肥大化・商業化。ひょっとして五輪を「呪っている」のはクーベルタン男爵?
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