コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
2019年02月07日
オリンピック公式記録映画はどんなモノになるか?
2020年御東京オリンピックの公式記録映画の監督が、国際映画祭などで数々の受賞歴のある河瀬直美さん(49)に決まった。
これは大変な仕事だ。なぜなら2週間位渡って繰り広げられる「人類の祭典」「スポーツの祭典」「平和の祭典」を3時間程度の映像にまとめるのだ。
市川崑監督が公式映画を製作した1964年の映画の場合、総予算が3億7千万円(現在の価値では約10倍!)。103台のカメラと232本のレンズを使って、総勢500人のスタッフが、70時間分にも及ぶ映像を撮った。
それを半年以上かけて約3時間にまとめた結果、完成時は元五輪担当が「記録性がない」と酷評。「記録か芸術か」という大論争にまで発展した。が、現在では「史上最高のスポーツ映画」と評価する声が多い(私もそう思う)。
生前の市川監督から、次のようなエピソードを聞いたことがある。
サッカー会場だった駒沢競技場で撮影中、10人ばかりのお婆さんたちに出逢い、彼女たちに「オリンピックはどこでやってますか?」と訊かれた。
日本中がオリンピックに大騒ぎしているので、お婆さんたちも見物に来たが、そこでは男たちがボールを蹴っているだけ。そこで「オリンピックはどこで?」という質問になったのだが、その質問を浴びせられて以来市川監督は、「オリンピックとは何か?」「スポーツとは何か?」を考え続け、「人類は4年に一度夢をみる」という言葉に辿り着いた。そして、4年に一度の平和の祭典。「これを夢で終わらせていいのだろうか?」という言葉で映画を結んだ。
河瀬監督は「ボランティアの活動にも目を向けたい」と発言・新しい記録映画は半世紀前のものとは全く違うモノになりそうだ。
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