コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
2023年01月05日
「純粋にスポーツをやる組織」Jリーグが日本のサッカーを強くした!
今年は1993年にJリーグが誕生して30周年。サッカーW杯カタール大会で日本代表チームがドイツ・スペインという強豪チームに勝ったのも、Jリーグ誕生が出発点だと多くの人が認めた。
では、Jリーグの何が良かったのか? それはJリーグが「サッカー(スポーツ)を行う組織」だったからだ。
そんなの当り前じゃないか、と思わないでほしい。
プロ野球は親会社の宣伝のための組織で、大相撲は日本文化を継承する団体。高校野球は高校教育の一環で、オリンピックに出場する選手を抱える企業のスポーツクラブにも、企業の宣伝と社員の福利厚生という目的がある。
つまり日本のスポーツ団体の多くは、「スポーツを行うこと以外の目的」が存在する場合がほとんどなのだ。
それは明治初期に欧米からスポーツが伝わって以来の伝統とも言え、明治期の高等師範学校(現・筑波大学)蹴球部の部誌にこんな記述がある。
《凡(およ)そ運動は如何なる運動でも、運動そのものが目的ではない。躰を練ると同時に精神の修養をなし、他日大(たじつおおい)に活動する土台をつくるものである》
つまり、富国強兵を目指した明治時代の日本では、サッカー(スポーツ)を純粋に楽しむことはできず、兵士としての《躰と精神》を鍛えるという建前(スポーツ以外の目的)を掲げる必要があったのだ。
この建前が戦後にも残り、スポーツは「スポーツ以外の目的」を持つことが常識になってしまった。だからJリーグ誕生の時も、川淵三郎初代チェアマンに「Jリーグを創って何をするつもりですか?」と聞いた記者がいた。
「サッカーをします」。
その時の川淵チェアマンの回答は、スポーツをやること自体が素晴らしいと、日本で初めて宣言された瞬間だった。
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