コラム
三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!
連載4「落語家にとっての『掃除』とは」
2月生まれのわりに寒さに弱い三遊亭ぽん太です。
あっという間に師走ですね。
皆さんにとってはどんな一年でしたでしょうか?
私個人としては、この連載も始まりましたし三時間の怪談をやったり30席近いネタを覚えたりと色々と挑戦出来た年だとは思っております。
結果はなんとも評価出来ませんが(笑)
さて、師走の風物詩といえば大掃除ですが、落語家の修行は掃除とともにあると言っても過言ではありません。
私の師匠好楽の自宅兼寄席小屋である池之端しのぶ亭に関しては以前の記事でご存知かと思いますが、私の前座修行もしのぶ亭の掃除から始まりました。
うちの一門の場合は毎日お宅に伺うわけではありませんでしたが、呼ばれた際には必ず最初は掃除です。
しのぶ亭の客席はフローリングなので掃除機でゴミを吸ってからの雑巾がけ。
前日に宴会があるとこぼれたお酒のあとなどをきれいに磨きます。
ただ私は中学の頃、学校の掃除をサボってではなく逆にしすぎて先生に怒られたことがあるくらいには掃除好きなので特に苦ではなかったです。
あ、でもよそに行くとあれこれ気になるタイプのきれい好きなので自分の部屋はさほどです。
落語関連の資料やレコードがホコリとともに積んであります。
また、玄関の掃き掃除も大事です。
人間国宝でもあった五代目柳家小さん師匠のお宅では浴衣や着物などを洗って干す際に必ず正面が表を通る人に見えるようにしたそうです。
背中側を見せると世間に背をむけることになるから、だそうです。
それだけ世間=お客様を気にされていたんですね。
玄関ならなおのこと。
ご近所の方は「笑点の好楽さんの家だ」と思って前を通るわけですから責任重大です。
表の掃除といえばしのぶ亭の隣は神社で桜が植えてあり満開の時はもちろん美しいのですが、困るのは散った後。
掃き掃除はまだいいのですが、大変なのは玄関脇の通路の玉砂利に混じった花びらを一枚一枚取り除く作業です。
花びらはそのまま放っておくとしおれて見た目に美しくありませんし、また排水口がつまったりもします。
それを一枚ずつ取り除きます。
正直な話、入門当初そういった細かいところが行き届かず師匠に怒られたことがありました。
お客様に失礼があってはいけないから手を抜いちゃいけないよと。
ただ、怒られてもショックでへこむとかではなく、「本当に落語家になったんだ」という実感がわいて嬉しかったことを覚えています。
あと好楽一門ではない先輩もその時一緒に仕事をしていたのですが「入りたてでもお前は俺の弟子なんだから、お前が先に気がつかなければダメだ」と言われたのも、少女マンガで王子様キャラがヒロインに「俺の女になれよ」と強気で迫る、みたいな感じでちょっとキュンとしました。
何言ってんだとお思いでしょうが(笑)
そんなわけで掃除はただきれいにするだけでなく、お客様もそうですが、楽屋の先輩方にも気持ちのいい空間を提供するという落語家にとって基本中の基本を学ぶ大事なものなのです。
というわけで今年も師匠への感謝の気持ちを込めて大掃除でしのぶ亭をきれいに掃きたいと思います。
ただ終わった後の打ち上げで飲み過ぎて、吐くことはないようにしたいです。
では拙い連載にお付き合い頂きありがとうございました。
来年もよろしくお願い致します!
お知らせ
三遊亭ぽん太の月例落語会
ぽん太ラボvol.26
日時・12月25日(土)14時開演
会場・亀戸梅屋敷
料金・予約1500円、U25割1000円、ぽん太初めて割500円
予約、問合せ・pontathe2nd@gmail.com
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- 三遊亭ぽん太
- 落語家
- 1985年2月24日生まれ / 愛知県名古屋市出身 / 法政大学社会学部卒 / 2015年2月に三遊亭好楽に入門、前座名「好也」 / 2018年11月二ツ目に昇進「ぽん太」を襲名 / 現在、持ちネタは古典新作合わせて180席以上ある
- ぽん太さんのHP
https://pontathe2nd.amebaownd.com/
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