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三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!

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2023年09月29日

連載25「三年目」

ようやく涼しくなってきましたね!
エアコン無しで寝られて幸せです。
さてこの連載も今月で丸二年となりました。
早い!
連載している間に結婚もすれば引っ越しもしましたし筋肉痛も遅れてくるようになりました。
大人というかちゃんとおじさんになってます。
三年目もよろしくお願い致します。

落語の中にも『三年目』という噺があります。
師匠好楽の得意ネタで私も師匠から教わりました。
仲のいい大店の若旦那夫婦の女房が大病を患い、亭主がして欲しいことを言ってごらんと持ち掛けても、私の願いは叶えることが出来ないの一点張り。
よくよく話を聞いてみると、自分の死後に亭主がきっと後妻をもらうであろうことが恨めしいので死ぬに死ねないとのこと。
呆れながらも、もしそういうことになったら婚礼の晩に幽霊となって出てきて欲しい、きっと後妻は逃げるから、その後は幽霊のお前と二人で暮らそう、ということで相談がまとまります。
安心した女房はそのまま亡くなり、若旦那は親族の薦めで後妻をもらうことになりますが、その婚礼の晩に先妻の幽霊はやってこず、その後三回忌の夜にようやく現れると…というような噺です。
人情噺ではないですが、笑える中にも夫婦の愛情が見えます。

師匠の演じるこの夫婦がかわいらしくて、とても好きな噺です。
他の師匠方の口演と比べても、うちの師匠のはおかみさんに対して若い頃苦労をかけたことへの感謝の気持ちもかいまみえるような、実生活がちょっと反映されているような、そんな風に思えます。
落語は自分の解釈でセリフの変更が許されますのでちょっとしたことにその人の人生観や価値観が反映されます。
なんか心情的に言いにくいからと自然と変わることもあれば、時代に合わないのでちゃんと意図があって改変することもあります。
よくポリコレで古典落語は大変でしょう、などと言われますが江戸時代から考えたら昭和ですら価値観はめちゃくちゃ変わってますので、その時代その時代に合わせて作り直していくのは当たり前の作業だと思います。
いくら昔はよかったと言っても覆水盆に還らず、です。
立川談志師匠もおっしゃってました。
『現実は正解だ』
大なり小なり、現実や実体験からのフィードバックがあって落語は磨かれていくのだと思います。
落語家は話す中身に説得力が出る60歳以降が旬と言われています。
私も師匠のように可愛らしい『三年目』が演じられるように、公私ともに豊かに歳を重ねていきたいものです。
筋肉痛が遅れてくることくらいをおそれていちゃいけませんね。

あ、よく三回忌のことを亡くなって三回目の命日と思ってる方がいますが二回目ですからね!
たまに落語家でも間違えてる人もいますが!
十三回忌も十二回目の命日ですから!
それでは四年目を目指していきますのでよろしくお願い致します!

三遊亭好楽喜寿記念落語会にて三遊亭好楽喜寿記念落語会にて

お知らせ

三遊亭ぽん太の月例落語会

三遊亭ぽん太の月例落語会
ぽん太ラボvol.41 演目:三十石、他
日時・10月28日(土)14時開演
会場・池之端しのぶ亭
料金・予約1500円、U25割1000円、ぽん太初めて割500円
予約、問合せ・pontathe2nd@gmail.com

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三遊亭ぽん太
  • 三遊亭ぽん太
  • 落語家
  • 1985年2月24日生まれ / 愛知県名古屋市出身 / 法政大学社会学部卒 / 2015年2月に三遊亭好楽に入門、前座名「好也」 / 2018年11月二ツ目に昇進「ぽん太」を襲名 / 現在、持ちネタは古典新作合わせて180席以上ある
  • ぽん太さんのHP
    https://pontathe2nd.amebaownd.com/
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