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かがやく人

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2025年02月10日

「どうしたら視聴者の皆さんに相撲を楽しんでもらえるか。それを考えることが自分の役割なんだなって思います。」舞の海 秀平さんに聞く「私の健康法」

―今回はNHK大相撲解説者の舞の海 秀平さんにご登場いただきました。現役時代には「平成の牛若丸」「技のデパート」とも呼ばれ大相撲人気を牽引した舞の海さんに、現役時代の相撲への取り組み方や、解説者になられてからの相撲に対する思いなどについてお話を伺いました。

魚料理は季節を感じられる
それが嬉しいし楽しいです

私、生まれが青森なんです。東京の冬とは違って、耳がピリッと痛くなるほどの寒さで、一年の半分近くが雪で覆われるような場所でしたから、子供時代は、早く外で遊びたいなって思いながら長い冬を過ごしていたんです。だから雪が溶けて土が見えるとすごく嬉しかったです。四季の中では春が一番好き。春が待ち遠しいですね。

正直言いまして、体を動かしたり鍛えたりすることがすごく苦手なんです。現役時代に根を詰めてやったので、その反動なんですかね。でも残念ながら、人間というのは好きな事ばかりするわけにはいかないんですよね。例えば食べたいものを食べて、それでいてずっと健康でいられるっていう事はないんだなって。最近は目的地に行く時に一駅手前で降りて15分~20分くらい歩くようにしています。食事も、お腹いっぱいになるまでは食べずに、腹八分目までにするよう心がけています。

食べ物は昔から魚料理が多かったんです。本当はハンバーグとか唐揚げとか、そういうものが食べたかったですが、毎日煮魚や焼き魚、味噌汁の中にも魚のアラが入っていたり。でも味覚っていうのは、だんだんと子供の頃に戻っていくものなんですかね? 東京に出てきて、大学や相撲部屋での生活が始まると肉類が多くなっていくのですが、だんだん現役の終わり頃から、やっぱり魚って美味いなって思い始めました。それに肉は一年中あるじゃないですか。でも魚は季節を感じられます。コハダが美味しい季節になったとか、貝類が美味しくなったとか、魚で季節を感じることができる。それが嬉しいし、楽しいですね。だんだん大人になってきて、子供の頃ってすごく良い食生活をしていたんだなって思います。

体重を増やすということは
稽古よりもきつかったです

大学時代は体重を増やさなければなりませんでしたから、朝からどんぶり3杯食べて、昼は学食で2人前食べて、授業の合間は喫茶店でケーキを食べたりとか。帰りにまた立ち食いの店でうどんを食べて、そして稽古をした後、夜はどんぶり5杯ぐらい食べました。さらに寝る前には牛丼を食べたり。

それでなんとか、大学入学時に67キロくらいだったのが、卒業するときには92キロになりました。稽古よりも体重を増やすことがきつかったですね。常に胃薬を飲んでいたほどです。他の人は130キロとかありますから、とにかく軽すぎて相撲にならないので、少しでも体重を増やさないといけなかったんです。

現役の頃は、腹いっぱいになっても、そこからまたもうひと踏ん張りで食べなければいけませんでした。そうしないとどんどん体重が落ちていくんです。大体本場所15日間で3~4キロ減りますから。

それでもやっぱり、相撲が好きなんです。子供の頃は野球とかも好きでしたが遊び程度。中学から本格的に相撲部に入って、そこからずっと相撲一筋でした。体の大きな人を投げたときの快感と、なんといってもお客さんが喜んでくれること。それが一番ですね。

自分自身に負けたくない
その思いで怪我を克服

現役時代、小錦さんに乗っかられて、左足の前十字靭帯と内足靭帯を損傷しました。それまでは自分は怪我とは無縁、怪我をする人は運動神経が悪い人だと思っていたんです。ところがやっぱり絶対ってないんだなって。自分も怪我を経験すると、いつどこで何があるか分からないんだって痛感しました。

一度はそこで辞めようとも思ったのですが、怪我がつきものな世界だし、そこから復活している人も大勢いますので、そこで辞めるというのは怪我とか困難から逃げることになるじゃないですか。そうするとやっぱり自分で自分が嫌になってしまいます。私は弱い人間、私は苦しみから逃げた人間なんだって。そうするとその後の人生も灰色の人生になってしまうじゃないですか。結果はどうであれ、今やれる最善のことをやろうという気持ちに切り替えてリハビリに取り組みましたね。自分自身に負けたくない。弱みを見せず、強い人間だっていうのを見せたい。そういう気持ちがありました。これって、津軽弁でいう「ええふりこぎ」、いわゆる「カッコつけ」「見栄っ張り」なのかもしれませんね。

NHKの解説を始めて25年
相撲の楽しさ伝え続けたい

引退した今はゴルフをやる位ですかね。最近、カートに乗らずに歩くようにしているんです。現役の頃は逆に疲れてしまって歩けませんでした。直径4メートル55センチの土俵の中では動けますが、長時間歩くというのは、お相撲さんは苦手なんですよ。歩くのは本当に苦手ですが、それではダメだと思って。ゴルフを楽しむだけではなく、体の事を考えて歩けば一石二鳥です。

NHKで相撲の解説をさせてもらって、もう25年経つんですよ。本当にありがたいです。そこに感謝をしながら、どうやって言葉や表現を駆使し、視聴者の皆さんに相撲を楽しんでもらえるか、分かってもらえるか。常にそのことを考えています。ひょっとしたら、このまま子供の頃から大好きだった相撲と一生付き合っていけるかもしれません。それが運命だと思うと、それ以外の将来の夢や展望っていうのは考えられないですね。どうしたら相撲の魅力を伝えられるか。どうやって分かってもらえるか。多分、それを考えることが自分の役割なんだなって思います。(談)

 


プロフィール
舞の海 秀平(まいのうみしゅうへい)さん
1968年生まれ。青森県出身
大学卒業後に出羽海部屋へ入門し、1990年に初土俵を踏む。
以来、小柄な体格ながら多彩な技を駆使して大型力士を倒す取り口で人気を博す。
引退後はNHK大相撲中継の専属解説のほか、スポーツコメンテーター、旅番組レポーターなどで活躍中。

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