コラム
衣替えのタイミングで持ち物チェック~江戸っ子の夏準備 連載15
「夏も近づく八十八夜」立春から数えて八十八日。現在の暦では5月2日のゴールデンウィークの最中になります。なぜ八十八なのでしょうか?
「八」はその形から、「末広がり」につながり、おめでたい数字とされてきました。さらに「八十八」は「米」という字に組み替えられます。米は貴重で尊ばれていましたので、とても縁起の良い数字でした。
「八十八夜の分かれ霜」といわれるように、この頃から霜の心配も無くなり、農家にとって、苗代づくりや種まきの季節となります。八十八夜は春から夏へと季節が変わり、夏への準備をする節目の日と位置づけられていました。
またこの頃から四季豊かな日本ならではの「衣替え」の季節です。現代ではエアコンが発達し、一年を通してどの季節も快適に過ごせるようになりましたので、キッチリと衣替えをする方も少なくなったように思います。せいぜい重たいコート類を片付ける程度の事でしょうか……。
私は6月に学生などの制服がブレザーから薄物になると夏への準備を意識します。
四季のある日本では、とても理にかなった習慣ですが、もともとは物忌みの日に行う宮中行事が始まりだそうです。
ルーツは平安時代の「更衣」という行事です。冬から夏、夏から冬へと季節が変わる節目は厄日とされていました。衣を替えることで、それまでのたまった厄を祓う意味もあったそうです。
季節を先取りするのがオシャレ! ファッションセンスのある人は今も昔も変わりません。
江戸では将軍から長屋の住人まで、懸命に衣替えをして季節の先取りを楽しんでいました。
武士はこれまで来ていた袷を麻や帷子に、町人は夏用の浴衣に着替えるという具合です。
貧しい庶民は衣替えの着物も揃っていないので、今まで着ていた袷の裏をはずすなど、仕立て替えをしなければなりませんでした。子沢山の裏長屋のおかみさんは、たいそう忙しい季節だったことでしょう。それだけオシャレな江戸の人は、生真面目に衣替えをし、初鰹がたとえ高価でも買ってしまうほどの初物好きで見栄っ張りですから、敗れた障子を張り替えることはしなくても、季節を先取りする衣替えをしなかったら江戸っ子がすたる、という考えでいたようです。
平安時代には年2回だった衣替えも、江戸時代には年4回、幕府が直々に定めるものとなりました。4月1日と9月1日からは、裏地のついた「袷」という着物、5月1日からは裏地のない「帷子」という着物を、九月一日からは「綿入れ」という着物を着ることに定められたのです。
衣替えが年4回になったのは、平安時代より着物の種類が増えたためだと言われています。しかし明治になると、衣替えはまた年2回に戻り、そのしきたりは現在まで続いています。
制服のない私の場合は、着物が袷から単衣に変わる時が衣替えです。洋服も持ち物の点検という意味で季節の節目にチェックしてみると、所持数も把握する事が出来、無駄に買うことも少なくなるはず。現代は季節の先取りいうより、物の管理という気持ちで、衣替えは季節の節目の「持ち物チェック」という意味で実践すると、物溢れも防げ一石二鳥の気がいたします。(老友新聞社)
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